分社化による好影響にも言及
【CES】SVP今村氏が語る“BRAVIA”「Android採用」「HDR・ハイレゾ対応」の戦略図
ー 今年のCESは「ハイレゾ」「HDR」など、ソニーのテレビ進化していく方向性が示された。今後はどのように展開していく考えか。
今村氏:ハイレゾ対応という方向性は、当社がオーディオで取り組んできたことをテレビに活かしたもの。テレビ放送にハイレゾはないので無意味ではという向きに対して、ソニー独自の高音質化技術である「DSEE HX」を入れることで、お客様がハイレゾ相当のいい音を、いい画とともに楽しめるというストーリーを持っている。こちらは積極的に展開したい。実際にはハイレゾ対応をテレビのスピーカーで実現することは並大抵ではなかった。テレビは筐体が大きいので、共振や振動ノイズによる妨害もある。その中でしっかりと高品位なハイレゾ再生ができる構造と回路設計に腐心してきた。
HDRについては、2年前から「トリルミナス」による広色域化に取り組んでいる。いま多くのテレビメーカーが色再現性能の向上に取り組んでいる。4Kの高解像化に伴う信号技術は、大きな流れとしてブラウン管を基準とした信号処理をもう一歩進めて、ディスプレイが表現できる高いダイナミックレンジ、色域に合わせて送り出しを定義するという節目に来ている。ドルビービジョンなどがその提案の一つ。新しい高画質化の波は私たちにとっては歓迎すべき出来事だ。
一方でソニー1社だけがある基準を世の中に問うても、これはソニー製品をお持ちのお客様しか楽しめないクローズドなものになってしまう。HDRを多くのお客様が楽しめるような基準に育てていけるよう、業界が一体となって進めていきたい。その意味では、先頃設立された4Kのプロモーション団体である「UHDアライアンス」(関連ニュース)に当社も参加して、将来の4K画質はどうあるべきかという議論にも積極的に関わっていくつもりだ。
ーー スマートテレビのプラットフォームに「Android TV」を採用した理由は?
今村氏:スマートテレビ機能は、先述した「3つの柱」の中の“使い勝手の向上”に関わる部分であり、様々な議論を繰り返してきたところ。コンテンツが多様化して、モバイルデバイスから色々な情報を取得してくるというところで、それをどのような手段で簡単にテレビの大画面に映す方法が良いのか検討してきた。最もポピュラーなモバイル端末とのシームレスな連携を実現するうえで、Androidが一番有利と考え、2年前からGoogleと様々な議論を交わしてきた。グーグルもAndroidを従来からのスマホやタブレット以外にも、色々なデバイスに広げていきたいと模索していたタイミングと合致して、両社で協業してきた。
グーグルとの話し合いの中で「テレビとは何か」ということも議論した。私たちはテレビが大きなタブレットであるとは考えていない。その基本はお茶の間でリラックスしながら手軽に映像コンテンツを楽しむためのものであり、能動的に情報にアクセスするためのモバイル端末とは役割が異なる。グーグルの側にはとにかく簡単に楽しめるようなユーザービリティを作りたいというリクエストがあり、双方の思いが一致する中で議論を進めてきた。
一方で事業の状況を考えた場合、かつては自社でSoCを作り、合わせ込んだLINUXベースのソフトウェアを乗せてきた。これから先のことを考えると、1社だけで開発のすべてをまかなったり、世の中に溢れているモバイルのアプリケーションとハードウェアを連携させる開発を単独で行うことの限界は常に議論してきた。そこで今のスタンダードに近いAndroid OSベースでアーキテクチャを基本的に見直して、これまでソフトウェアに費やしていたエンジニアリングを、ソニーが本来強くすべきである画質・音質にリソースを集中させるために、Androidを採用した。