【CES】次世代BD・HDR・8K − 折原一也が振り返るCES 2015の高画質トレンド
ただし日本メーカーに関して言えば、量子ドット技術はほとんど採用されていない。日本ではソニーが、2013年モデルの4Kブラビア初代モデルでQD Vision社の量子ドット技術を採用していたが、昨年より既に別の技術へ移行済みだ。パナソニックの次世代VIERA参考出展モデルも、既述の通りKSF蛍光体を採用しており、同社担当者によれば「量子ドットよりも、KSF蛍光体の方が広色域だけでなく発光効率を向上させられる」とのことだった。シャープは自社で開発・製造も可能な量子ドット技術のデモ展示は行っていたものの、今回のCESにおける目玉の「Beyond 4K」などは新世代の白色LED技術を採用しているとのことで、量子ドット技術ではない。
量子ドット技術に熱心なのは、グローバルで大きな存在感を持つ韓国勢だ。CESに展示されていた量子ドット技術採用テレビの代表格はサムスンだ。同社では量子ドット技術採用のテレビ製品群を「S-UHD」という名称でブランド化しようとしており、ブース内ではHDRのデモを実施。デモ展示でも心なしか、強烈なコントラスト比のソースが目立つように思えた。
サムスンの説明によると、S-UHDのディスプレイでは従来比2.5倍のコントラスト比を持ったHDR表示に対応しており、輝度が従来比10分の1の黒色表示が可能としている。先に説明した量子ドット技術の採用とあわせ、コントラスト比を重視した画質を目指していると思われる。
一方でLGは、「ColorPrime NANO SPECTRUM」と呼ばれる新しい技術を搭載したモデルを展示していた。この技術は量子ドット蛍光体のシートを採用し、従来比20%の広色域と純度の高い色表示をサポートするというものだ。LGによるデモの特徴は、HDRよりもDeepBlack、つまり黒の締まりを前面に押し出している印象だったこと。これは同社が有機ELテレビを高画質モデルの主力として位置づけていることが理由にあるのだろう。
いずれにせよ、今回のCES会場で量子ドット技術を推している印象だったのは、主要テレビメーカーではサムスンとLGくらい。もっとも、今後の展開次第では、中国や韓国のメーカーを経由し、テレビやPC用ディスプレイなどの形で、採用製品が日本で登場する可能性は大いにありそうだ。
最後に有機ELテレビ(OLED)についてだが、今回のCESでデモ展示を行っていたのは、実質的にLG一社のみだった。それでもLGは有機ELで77/65/55型のモデルを展開し(なお、今回は特に説明がなかったが、OLEDの全モデルが4Kになったようだ)、特に黒色表示の美しさを強調したデモを行っていた。なお有機ELは画面輝度を上げると寿命が短くなるため、HDRには不向きなデバイスと見られている面もあり、デバイスの特長である黒色の締まりと暗部階調の美しさをアピールすることが、生き残るための道になりそうだ。
なお、パナソニックは65型の有機ELテレビのデモ展示をしていたが、詳細を尋ねたところ去年IFAで展示していたのと同じものとのことで(関連ニュース)、他社製の有機ELパネルを利用してパナソニックが映像面の作り込みを行ったものである。ただし相変わらず調達コストが高く、現時点で発売予定はないとのことだった。
以上、2015 International CESの映像関連の展示を紹介した。改めてまとめてみると、今年は高画質関連の話題が豊富だった。次世代BD規格ULTRA HD BLU-RAYが登場する年だけに、薄型テレビのHDR対応については、早期に火を付ける必要がある。いずれにせよ、映像フォーマットが激変する2015年は、高画質ファンにとって大いに期待できる1年となることだろう。
(折原一也)