新コーデック「aptX Adaptive」標準搭載に
クアルコム「Snapdragon 855」詳報。モバイルの5G/オーディオ/ビジュアル体験が変わる
オーディオ関連では今年の10月に国内でクアルコムが記者会見を行い、詳細を説明した新コーデックのaptX Adaptiveが、Snapdragon 855から標準搭載されることが明らかになった。来年以降に商品化されるSnapdragon 855シリーズを搭載するモバイル端末は、オプション機能としてaptX Adaptive対応を選択することが可能になる。
オーディオ関連の技術について、壇上で説明を行ったクアルコムテクノロジーズのProduct Management DirectorのHiren Bihinde氏は、「aptX Adaptiveの高い接続性能、低遅延の特徴を、ワイヤレスオーディオと組み合わせて楽しむモバイルゲーミングのサウンドにも提案していきたい」と意気込みを語った。
昨年のSnapdragon Technology Summit(関連ニュース)で発表された、左右独立設計の完全ワイヤレスイヤホンをターゲットとしたBluetoothオーディオ信号の通信技術「Qualcomm TrueWireless Stereo Plus」(関連インタビュー)は、現行のSnapdragon 845シリーズを搭載するスマートフォン側のソフトウェアアップデートによる対応を待っている段階だが、Snapdragon 855シリーズは最新のソフトウェアを標準搭載して出荷される。
これによってQCC5100やQCC3026など、クアルコムのBluetoothオーディオ向けSoCを搭載したワイヤレスイヤホンと組み合わせると、高い受信感度とバッテリーのスタミナを確保した音楽リスニングが楽しめるようになる。
クアルコムが「XR(Extended Reality)」として提案するVR(仮想現実)/AR(拡張現実)/MR(複合現実)の各技術については、Snapdragon 855シリーズでも高性能なGPUとDSPが実現する次世代のエンターテインメントとしてハイライトされた。
今回のイベント会場では、AT&Tが仮設した5G対応のネットワーク環境を使って、高精細なVR映像のコンテンツを無線で飛ばしヘッドセットで視聴するデモンストレーションが実施された。Snapdragon 855シリーズの登場により、今後スタンドアロンタイプのVRヘッドセットの開発に弾みがつくかもしれない。
セキュリティ関連では「Qualcomm 3D Sonic Sensor」の開発が進んでいることも伝えられた。これはフレキシブル有機ELのディスプレイモジュールに、超音波による指紋スキャンを行う極薄のセンサーデバイスを組み込むクアルコムの独自技術である。
超音波による指紋の立体スキャンを行うため、2Dの光学スキャンよりも精度の高い指紋データを記録して、デバイス上でセキュアに管理できるところが特徴になる。センサーを搭載したフィルムが極薄であることから、スマホなど搭載する端末の薄型化にも貢献できるという。超音波を使うため、ディスプレイの焼き付きも起こりにくい。現在クアルコムと共同で開発を進めている端末メーカーがあるとのことで、その名前は明かされなかったが、2019年前半にハイエンドモデルから搭載が始まるそうだ。
なお、Snapdragon 855 Mobile Platformを採用する“5G対応のスマホ”は、2019年にローンチが見込まれている。イベントのゲストとして招かれた中国のOnePlus、および中国の大手通信キャリアであるChina Mobile、Xiaomi、OPPO、Vivo、ZTEが現在開発を進めるクアルコムのティアワンブランドであることも明らかにされた。OnePlusは現在4G LTE端末を展開するUKでも、2019年に5Gスマホを発売するための研究開発を進めている。
日本国内のキャリアについては、NTTドコモが2019年に5Gのプレサービスを開始し、翌年の2020年春から商用サービスを立ち上げる計画を公表している。KDDIとソフトバンクも2020年を商用化のタイミングを見計らっている。
Snapdragon 855シリーズの出荷は既に開始されているが、日本国内では5G対応も含め、どのような形でスマホなどの端末が投入されることになるのだろうか。来年以降の展開に注目したいと思う。