新マウントで勝負に出た戦略モデルの実力
ソニー“α”は新たなステージへ − 新開発デバイスてんこ盛りの「NEX-5」を試す
■とにかくボケまくる!
NEX-5に搭載された撮像素子はAPS-Cサイズ。フォーサーズシステムに比べて約1.6倍、一般的なコンパクトデジカメで用いられる1/2.4型の撮像素子に比べ約13倍という大きさだ。ちなみにレンズマウントは、本機に合わせて新開発された「Eマウント」を採用している。
センサーが大きければ被写界深度を浅くでき、ボケ感を得やすいのはご承知の通り。また画素間の信号の干渉も抑えられ、ノイズにも強くなる。これらが一眼カメラの大きな利点だが、本機はAPS-Cサイズという大型センサーを採用することで、さらにそのメリットを際立たせたと言える。
実際に撮影してみると、こんなにボケていいの、と思わずカメラに問いかけたくなるほどボケまくる。焦点距離が35mm換算で27〜82.5mmの3倍ズームレンズを使用し、望遠端で被写体を捉えると、マイクロフォーサーズ機で約80mm相当で撮影した場合よりもかなり大きなボケ感が得られる。同焦点距離が24mmのパンケーキレンズでも、絞りを開放して被写体に近寄れば、目にピントを合わせて体はボケさせる、といった印象的な画作りが可能になる。
たとえ初心者でも、少し慣れたら自由自在にボケ感をコントロールできるようになるだろう。このボケ味の大きさを上手に利用すれば、被写体をより際立たせることが可能になり、コンデジとはまったく異なる、雰囲気のある写真が撮影できる。
また、シーンに応じて設定を自動調整する「おまかせオート」にしておくと、背景のボケを一発で調整できる機能が利用できる。これも便利なことこの上ない。いちいちモードを切り替えて絞りを設定しなくても、あるいは絞りなどと言う言葉を知らなくても、ボケ味のある映像が手軽に撮影できてしまう。
なお、他社製のマイクロフォーサーズ機にはオートホワイトバランスの挙動が怪しいものも見受けられるが、本機は状況に応じて、かなり自然なホワイトバランスに設定してくれる。室内の白熱灯下で撮影すると、やや赤みが強くなる傾向はあったが、それでも若干の修正で対応できる範囲に収まっていた。
大型センサーを搭載しているだけあって感度性能も良好だ。ISOは最大12800まで設定できる。12800ではさすがにノイズが目立つが、極端に暗い場面などでは活躍するだろう。使い人の好みにもよるだろうが、おおむねISO 3200くらいまでなら、画質劣化をそれほど気にせず使うことができそうだと感じた。
■ソニーが培った技術をフル投入した充実の撮影機能
撮影機能の充実ぶりも特徴の一つ。同社のCyber-Shotの最新機種に搭載された機能のほとんどがNEX-5でも利用できる。
連写機能では「速度優先連続撮影」モードにすれば、7コマ/秒の高速連写が可能。ただしピントと露出は1枚目で固定される。
また特筆したいのは、連写と合成機能を組み合わせた撮影機能の充実ぶりだ。「スイングパノラマ機能」はその代表的なもので、本機能を利用した3D画像撮影機能「3Dスイングパノラマ」機能も7月中旬のファームアップで利用できるようになる。
「オートHDR」機能も、使ってみたらその威力に驚かされるだろう。1回のシャッターで露出を変えた3枚の写真を連写し、階調を最適化しながら合成して1枚のJPEG画像を生成するというものだが、屋内と屋外がフレーム内に混在している場合など明暗差の大きいシーンでも、白飛びも黒つぶれもない画像が撮影できる。様々な場面で活躍するはずだ。
高速連写した画像を重ね合わせて1枚の画像を生成する機能では「人物ブレ軽減モード」「手持ち夜景モード」も便利。手ブレと被写体の動きブレにさえ気を付ければ、ノイズが少なく明るい画像が撮影できる。