実売10,000円台のクオリティとは?
音質×設置性×価格で選ぶPCスピーカー6選 − 新人記者がホンネでレポート
「PCでの音楽鑑賞」に特化した卵型のUSB駆動モデル
■オラソニック「TW-S7」
¥OPEN(市場想定価格10,800円前後)製品サイト
まずオラソニックのTW-S7を聴く。本機はUSB接続方式でPCからのバスパワー駆動に対応しており、PCと繋いだ瞬間から電源が入る。本体にボタンやスイッチなどの類は一切装備せず、音量の調整はPCのプレーヤー側で行うかたちだ。
「…たまご?」と最初はユニークな外見に目が行くが、説明書を読んでみるといわゆる「デザイン押しの色モノ」ではないのだ。本来USBを電源とするスピーカーでは5W+5Wが出力上限となってしまうらしいが、このTW-S7は2倍の最大出力10W+10Wを実現するのだという。独自技術「スーパー・チャージド・ドライブ・システム」により、再生時に音量が少ないときは余る電力をコンデンサーに溜め、大きく出音が必要なときは溜めておいた電流を一気に解放するらしい。こういった説明を読むと凄いことをやっているのだが、あくまでも数字は数字。実感のないまま、記者は軽い気持ちでiTunesの再生をクリックした。
次の瞬間、「軽い気持ちですみませんでした」と床に手をついて平謝りである。広い音場に、しっかりとした低音で実の詰まった音。目の前のスピーカーから音が出ているように聴こえない。衝撃である。特に試聴した中で印象的だったのは『Trap』を流したときで、くるみ割り人形くらいの卓上サイズのロバート・スミスが、ちょうどPCのうしろ側にいて歌っているかのよう。もがくように歌うロバート・スミスの潤った声と、次いで現れるギターのリフがふんわりと空間に広がっている。
仕様を確認してみると、内部のスピーカーユニットは60mmのコーン型フルレンジで、背面にはパッシブ型ラジエーターを採用しておりこれが低音を強化させる役割を持っているという。最大限の技術を投入しつつ、必要な装備だけを無駄なく備えている印象だ。再生周波数帯域は60Hz〜20kHz。
また、小型の筐体はとにかく設置性が良い。USB接続で別途AC電源を必要としないため配線もシンプルで、机の上の配置をほとんど変えずに設置することができる。
コンパクトな筐体でパワフルな出力を叶える小型モデル
■オーディオテクニカ「AT-SP151」
¥12,600(税込)(製品サイト)
70.5W×135.6H×74DmmというコンパクトサイズのAT-SP151は、箱を開ける前から梱包の小ささに驚いた。質量は約490g(Lch)/約540g(Rch)で、手に取ってみると予想よりずっしり重みがある。先述のTW-S7と同様に、普段のデスクトップ上の配置をほとんど変えずに設置することができるモデルだ。
音源入力はPCのヘッドホン端子と接続する形式で、本体のほかにAC電源と3.5mm端子を備えたケーブルが同梱されている。「L」「R」は本体裏面に記載されていて、ACプラグや3.5mmミニ端子は全てRch側に装備する。Lchの上部には本体の電源スイッチが備えられており、ONにひねると、スピーカーがゆっくり目を覚ましたように本体下部のLEDランプが点灯する。ON/OFFがわかりやすいデザインで嬉しい。
曲を再生してみると、こちらもしっかりと音が広がる。ヘッドホンで音楽を聴くと、音楽が頭蓋骨を囲んで立体的に響くイメージがあるが(※編集部注:恐らく杉浦は「頭内定位」のことを言っています)、それをもっと大きく広げた音場がカパッと目の前に出てきた感じだ。リリースを読むと「低音の再現を高めた」と表現されているモデルだがその印象はナチュラルで、全体的にパワフルだが毒々しくはない。『主よ、人の望みの喜びよ』を聴いているとき、「キン…」と冷えた氷のようなトライアングルの高音が素直に綺麗で印象に残った。
内蔵するスピーカーユニットはフルレンジタイプで52mm。Rch上部の音量ノブで物理的にパッと音の調整が行えるのは使いやすい。
筐体のコンパクトさを優先してPCスピーカーを選ぶ場合であっても、もちろんユーザーとしては、より良い音質の製品を求めたい。パワフルな出力で豊かな音場を確保するTW-S7やAT-SP151は、まさにそのニーズを叶えていると言って良いと思う。さて、勢いがついてきたところで、続いては少し大きめの中型サイズのモデルを聴いてみる。