実売10,000円台のクオリティとは?
音質×設置性×価格で選ぶPCスピーカー6選 − 新人記者がホンネでレポート
PCソースに新たな満足を得られるモデル
■オンキヨー「GX-70HD」
¥OPEN(市場想定価格13,000円前後)製品サイト
今回試聴した中では大型サイズとなるGX-70HDは、10cmのOMFコーン型ウーファーと、2cmのバランスドーム型トゥイーターを搭載する2ウェイバスレフ型。本体裏面にはプッシュ型のスピーカーターミナルを備えており、そこにRchとLchを接続する先割れ型の付属ケーブルを繋ぐかたちとなる。音源入力は、付属のRCA→3.5mmケーブルでPCのヘッドホン端子と接続する。
PCスピーカーの場合、いわゆる「お父さんのオーディオルーム」にあるスピーカーとは再生する音場が違い、デスクトップを基本にした空間表現になる。演奏者の編成が組まれたクラシックやジャズなど、大きなステージのライブ感が重要な音楽を再生したら、パンチが足りないのが当たり前だ。
しかし記者は、本機でバッハのジャズカバー『主よ、人の望みの喜びよ』を再生してみたとき、目の前に高音質の自分専用小型ステージがあって、そこで小さなライブが行われているような面白い感覚を受けた。もちろん部屋全体を取り囲まれるような重厚なライブ感とは異なるが、ピアノ/バス/ドラムスの音はそれぞれに陰影がついたように立体的で生々しい。途中で一瞬入るフィンガーピッキングの乾いた音も小さな存在感を持っていて、一言でいえば曲を聴いていて楽しい。これが最近憶えた「ニアフィールドリスニング」というものの醍醐味なのかとワクワクして惹き込まれる。
音声入力はRCA2系統を備えており、PC以外の再生機器とも同時接続が可能で、同2系統の出音バランスを調整することもできる。
Rchの前面には、音量、BASS、TREBLE、入力2系統の出音調節、ヘッドホン出力を備えている。高音/低音の調節ができ、ある程度自分の好みのバランスを作り出すことができるため、それによって本機の魅力が一層高まっている。またサブウーファー用のPREOUTも1つ装備しており、あとから2.1chにできる仕様だ。
最大出力は15W+15Wで、周波数帯域は48Hz〜100kHz。サイズは123W×225H×203Dmm(Lch)と通常のブックシェルフ型くらいあるので、デスクトップ空間を大きく占領するが、そんなことは問題ではないと思えるほどの聴感を与えてくれた。
シンプルな接続で広い音の空間を生み出すモデル
■ロジクール「Z520」
¥OPEN(直販サイト価格12,800円・税込)製品サイト
最後に紹介するのはZ520。三角形が溶け出したような個性的な形状を持つ本機は、121.9Wx231.1H×165.1Dmmで質量2,200g。決して小さくはないサイズだが、同梱物は本体+AC電源のみというシンプルな構成で接続方法がわかりやすい。
こちらも音声入力はPCのヘッドホン端子と繋ぐスタイルだが、配線ケーブルは長さに余裕があって設置がスムーズだ。「L」「R」は本体裏面に記載されている。
本機の試聴において、聴感として印象に残った音源はAphex Twinだ。アルバムの1曲目『4』を再生すると、すぐさま空間的な広がりが感じられた。さっそく仕様を確認してみる。この広がりは、ドライバーユニットを前方と後方に配置して広いスイートスポットを確保するという独自技術「オムニディレクショナルサウンドテクノロジー(360°サウンド)」の効果なのだろうか。電子音が繰り返し目の前を通過していく中、途中で入る「イェッ」の音声が楽曲を折り返すように空中から聴こえる。また、聴感はイメージ的に「残る感じ」で、『Girl/Boy Song』の序盤のサンプリング音は、ざわめきの中から漏れる吐息のように聴こえてきた。
電源スイッチはCompanion 2 Series II multimedia speaker systemと同じく音量ノブと一体型で、スマートな操作ができる。音量ノブは多少重い操作感だが、むしろ細かい調整がきくので個人的には丁度良いと感じた。
本機も音声入力に3.5mmステレオミニ2系統を備えており、PC以外の再生機器と同時接続することが可能だ。定格出力は13W+13Wで、周波数特性は70Hz〜20kHz。
以上で今回の試聴を終えたわけだが、どれもこれも10,000円台という比較的手の届きやすい価格にも関わらず高いパフォーマンスと個性を持っており、それぞれCPの高さを実感できるモデルだった。次のページで、全6機種の特徴を簡単に振り返ってみようと思う。