ついに発売、新たな最高峰の実力とは?
【レビュー】Android搭載の“ウォークマン”新フラグシップ「Z1000シリーズ」を試す
■音質評価 − iPhone 4Sとの比較
今回ウォークマン Zの比較対象として使ったのは「iPhone 4S」と「iPod touch(3G)」だ。使用した楽曲はオスカー・ピーターソン・トリオ「You Look Good To Me」やウッディクリークの「MR.BOJANGLE」、ウィリアム・シルク「Summer Memories」など。
iPhone 4Sとウォークマン Zの比較試聴は、ウォークマンに付属の13.5mm EXイヤホンで行った。ウォークマン Zは音決めの際、このイヤホンでの音も重視しているだろうから、当然ウォークマンに有利な条件だ。
まずはiPhone 4Sから。「You Look Good To Me」を聴くと、低域の量感が太い。絶対な低域の沈み込みも相当なレベルだが、やや膨れ気味で、飽和した感があるのも確かだ。反面、ピアノやボーカルなどの中域は抑え気味で、高域も伸びきらない。
続いてウォークマン Zを聴く。ちなみに今回は、ノイズキャンセルやイコライザー、VPT(サラウンド)はオフ。DSEE(高音域補完)やクリアステレオ、ダイナミックノーマライザーなどもオフの状態で聴いた。
音が出た最初の瞬間で、解像感の高さに目を瞠る。シンバルの音色が繊細に表現されるし、一音一音の強弱がしっかり伝わってくる。また、高域の輝き感はiPhone 4Sとは別次元だ。ピアノの音のニュアンスの伝え方も見事で、この音を聴いたあとだと、iPhoneがボソボソな音だったことがわかる。
低音については、締まりがあるが、量感や沈み込みはいま一歩。だがその分、ブワブワ膨れることもない。制動力のある低域を期待する向きには良いだろう。
■iPod touchとも音質を比べてみた
さて、iPhone 4Sと比べてウォークマン Zの音が良いことは分かったが、ある意味でこれは当然の結果。同じポータブルオーディオプレーヤー機器と比べると、どのような結果になるのだろう。ここからはイヤホンをSHURE SE535に変え、iPod touchとの音を聴き比べてみた。
様々な曲を聴き比べて感じるのは、ウォークマン ZのS/Nが非常に良いこと。周波数帯域も整っており、特にどこが突出している、落ち込んでいるということがない。特に中域から高域にかけてのクリアさ、全体的な歪みの無さはやはり非常にハイレベルだ。
ウォークマン Zでは低域から高域まで、非常にバランスの良い音を聴かせてくれる。低域の絶対的な量感はやはり物足りなさを感じるが、締まりがあり、ソリッドな低域という印象だ。
ウィリアム・シルクの「Summer Memories」では、ボーカルの自然な広がり、細かな抑揚がしっかり伝わる表現力に驚かされる。それだけではなく、前述した声量が急に大きくなるポイントでは、張りのある大きな音がドーンとまえに飛び出てきてくる。立ち上がりが速くレンジが広いのだ。
これに比べると、iPod touchは、より万人受けする、わかりやすい音作りという印象を受ける。特に低域が太いので、全体的にサウンド力強く感じられ、短時間の試聴であればこちらを好ましく感じる方も多いかもしれない。だが細かなところを聴き込んでいくと、ドラムがダブついている箇所があったり、ボーカルがやや平板でパサパサしていたり、ダイナミックレンジもウォークマン Zに比べ狭かったりなど、次第に欠点が見えてくる。
全体的にウォークマン Zの優秀さが際だった結果となったが、今回感心したのは、付属イヤホン以外の、他社製高級イヤホンを使用した際の音質の良さだ。
前回、同じ編集部の山本がウォークマン Aシリーズをレビューした。私も短時間試聴したが、付属イヤホンと他社製イヤホンで聴いた際の音質差がかなり大きいことに驚いた。今回は高級機ということもあり、他社製イヤホンでの音質にも配慮したということなのだろうか。