“いい音・いい部屋”をトータルコーディネート
“音のDAIKEN”ショールームで学べる「音の良い部屋」を作るポイントとは!?
音環境を創造するトータルソリューションメーカーとして知られる大建工業。同社の東京ショールームに設置されたふたつの防音室には、「いい音・いい部屋」のための技術が凝縮されている。同社では年に数回、防音室の効果を味わえる体感ツアーを開催し、DAIKENのソリューションを体感できる機会を設けている。同社ショールームで学べる「いい音・いい部屋」作りのポイントとは!?
■「ホームシアターを作る目的」は何なのか? |
ーー まず、“音のDAIKEN”のホームシアターに対する姿勢、取り組みについてお話しください。
竹森 ホームシアターの本場であるアメリカには映画を楽しむ文化が根付いていて、「自宅に映画館をつくる」という傾向があります。要するにホームシアターは映画館のミニチュア版です。
しかし、日本のホームシアターの場合は、映画だけでなく、音楽を聴いたり、スポーツを楽しむなど、多目的な要素が部屋に求められます。ですから、日本におけるホームシアターの定義は、映画、コンサートホール、スタジアムで味わえる「感動を持ち込める空間」なのではないかと思います。
そうなりますと、住環境に制約のある日本のホームシアターでは、音環境を整えるうえでのさまざまな工夫が必要となってきます。よい音環境づくりのスペシャリストとして、機材のスペシャリストと一緒にホームシアターづくりに臨むのがわたしたちの基本的な姿勢です。
井上 さらに言うと、“日本のホームシアター”においても、昔と今では傾向が変わってきているように感じます。専用室を作って自分ひとりの趣味にとことん没頭する…という従来の楽しみ方に加えて、家族や仲間が集いやすいリビングシアターをあえて選択するというケースも増えています。
竹森 ホームシアターの導入目的が以前よりも多角的(多目的)になってきているということですね。ですので、良い機材を揃えて最高の画質・音質を追求するということももちろんですが、「その空間をどんなものにしたいのか」という、「住まい方」や「使い方」、つまりライフスタイルを考えることの重要性が高まっています。
ーー たしかにそうですね。例えばもし「部屋に友人を招いて大勢でホームシアターを楽しみたい」という人が、色々な機材を入れて画質や音質的に満足できるシアタールームを作ったとしても、あれこれ機材を入れたことで人を呼ぶスペースが削られてしまったとしたら…。
竹森 いちばん最初の目的とはかなり違ったものになってしまいますよね。せっかく良い機材を購入して素晴らしいシステムを作れたのに、その喜びもかなり小さくなってしまうのではないでしょうか。
井上 あらためて「なんのために部屋を作るのか」という目的をハッキリさせ、それを最後まで見失わないようにしなければなりません。
竹森 部屋のスペースという物理的な限界、部屋の特性構造、予算という制約が沢山ありますから、お客様のご希望されるすべてを実現させるのは現実的に難しいでしょう。そうなったときに、何を残すのか、何を捨てるのかという取捨選択を行うことになります。
ただ、その取捨選択をするためには、やりたいことのひとつひとつに対して、それが実現可能かどうかを判断する材料がなければ無理ですよね。その判断基準といいますか、部屋作りの「物差し」をお客様自身が知ること、また、そのきっかけをお客様に提供することが我々に求められているのだと思っています。
井上 例えば、最近は専用室だけでなく、前述のようにLDKなどでホームシアターを楽しむようになってきました。そうなりますと、専用室であれば左右に壁がしっかりとありますが、リビングですと、右側がキッチンかもしれない。いろいろな制約が考えられる。
そうした状況でベースになる音づくりをどうするかということで、当社のように建材メーカーとしてパーツをいろいろと持っていれば、「どの製品(建材)を」「どこに」「どのように」使えばよいのかと、パーツをチョイスして組み合わせていくことができます。こうしたことは、音の研究を重ねてきた建材メーカーである我々だからこそできることだと自負しています。
竹森 意外と見落とされているかもしれませんが、過去に我々が「防音/調音クリニック」(関連記事)で訪問させていただいたお客様のケースなどは、この取捨選択における格好の参考例と言えます。
例えばリフォームで4.5畳の部屋ふたつを繋げてシアタールームを作ったNさん(関連記事)は予算的な事情からプラン変更を余儀なくされましたし、家全体のリフォーム・リノベーションの一環として、住まいの耐震化とあわせてシアタールームも作ったMさん(関連記事)は「隣の和室と繋げて、ひとつの大きな部屋としても多目的に使える余地を残したい」というご希望がありました。
このように、リフォームやリノベーション、そして新築でも、お客様のご要望と数々の制約条件とのせめぎ合いというのは常に存在しています。繰り返しになりますが、こうしたときにどう優先順位を付けるのかという判断基準をお客様自身に持っていただけるように我々は活動していかねばならないと感じています。