【特別企画】短期集中連載
ティアック「Reference 501シリーズ」を聴く(第3回) プリメインアンプ「AI-501DA」
■ヌケやキレが良い音調ですっきりとした描写力を持つ
試聴はPCから本機のUSB入力に接続し、ハイレゾ音源を中心にチェックした。組み合わせたスピーカーはエラックのフロア型、FS 247 BEだ。
様々なタイプの曲を聴いた全体の印象を先に述べておくと、湿度感や肉感は控えめのややドライな音色で抜けっぷりが爽快。そのおかげもあって見通しの良い空間性も発揮する。低音も肉厚さや重みは無理には強調せずに、アタックの速さなど、キレや軽やかさを生かした表現。総じて無駄のない明確明快な描写が持ち味だ。
上原ひろみのピアノ・トリオ作品「MOVE」からは、アルバム1曲目のアグレッシブな表題曲を聴く。芯と輪郭がくっきりとしており、フレーズが実にクリアだ。音色と音像の安定感も良く、通常のベースよりも低い音程を出せる多弦ベースのまさにその低い音程の音も、音色や音像が薄れない。
ドラムスは前述のドライな抜けっぷりが特に好ましく発揮されるセクションだ。すっきり音場を背景に、太鼓らしい響きも豊かに感じられる。ピアノやシンバルなど高音は、やや硬質な音調でこちらもキレが良い。
ボーカルは宇多田ヒカルを中心に確認した。声の抜けのすっぱりとした感じが特徴的。肉付きも抑えて、すっとした立ち姿だ。声の手触りや語尾を掠れさせていく表現などの質感描写に優れている。
単体DACのUD-501を組み合わせてのチェックも行ってみた。重心が良い具合に少し下がり、音色や音場の厚みが増す。ベースとドラムスの重量感は明らかに強まる。ボーカルも声の濃さが増して陰影が深まり、表現がより豊かになる。
ディスクプレーヤーの「PD-501HR」でも、同じ曲をCDで試聴した。USB入力でのハイレゾ再生と比べるとざっくりとした感触。シンバルの荒い手触りによるキレ、ドラムスの炸裂感など、ロックなどを聴くときにはこれはこれで悪くない。
音質はもちろん、それ以上に感心したのはその佇まいであり、操作の手触りだ。オーディオは趣味のものであるから、性能と同時にそれとは別の満足感も求めたい。そんな想いを持っている方も、本機に触れれば納得するのではないだろうか。
(高橋敦)