[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第35回】Mac用高音質プレーヤー「Audirvana Plus」使いこなしテクニック
・Direct Mode
「Direct Mode」はOS X 10.7以降に向けてAudirvana 1.4から実装された新機能だ。
Direct Modeでは、OS Xのシステム標準のオーディオ処理の大部分をすっ飛ばして、Audirvana PlusからUSB-DACにほぼ直接にオーディオデータを送り出す。
OS X 10.6までに向けて同様の狙いで提供していた「Integer Mode」が、OS X 10.7以降ではOSの仕様変更に伴い単独で利用できなくなったために、このInteger Modeを復活できるようにしつつ、さらに踏み込んだ機能として実装された。OS X 10.7以降では、Direct Modeを有効にするとInteger Modeも有効にできるという形になっている。Integer Modeに対応するDACとしないDACがあるが、対応するDACを利用する場合は「Direct Mode」「Integer Mode」を共にオンにすると良いだろう。
余計な回路や処理はバイパスできるならバイパスした方がより純度の高い音質を実現できるというのは、オーディオの常道。実際に聴いてみてもその効果は明らか。例えばシンバルの音色の芯がピシッと細く硬質に通り、音色が立つ。エレクトリックギターも、クリーンも歪みも音の張りが相当に異なる。音像のブレのなさはベースやドラムスでも感じられ、全ての音像がより明確だ。また静かな場面での背景のその静かさの落ち着きや沈み込みも印象的で、その静かな背景によって細かな音の響きも際立つ。音質の面で副作用は感じられず、常時オンで良いだろう。
Audirvana Plus 1.4のβ版の時点では難があった安定性の面も、最新の正式版であるVer.1.4.4では、僕の環境においては特に問題を感じない。ただしシステムの深い部分にまで入り込む機能であるので、問題の原因になる可能性は捨てきれない。利用中に何らかの不具合が起きた場合には、いったんDirect Modeを無効にして様子を見てみるとよいだろう。
なお「Direct Mode」オンのときには「Use max I/O buffer size」の設定はなくなる。
・Maximum memory allocated for tracks Pre-load
続いては「Maximum memory allocated for tracks Pre-load」という項目だ。
これは音楽ファイルのデータをSSDやHDDから先読みしてメモリーに展開しておくことで、音声処理の精度や安定性に優位を得ようという設定。最低256MBから最大3072MBまでの範囲で段階的に設定できる。これも、単体の調整で明快な音質向上が得られるというほどではないのだが、積み重ねのひとつとしてチェックしておきたい。
さてこれに割り当てるメモリー容量はもちろん大きくした方がより優位なのだが、ここはご自身が利用しているMacのメモリ容量とその利用状況との兼ね合いで設定してほしい。無理に大きな容量を割り当てると、Mac全体で見た場合にメモリ不足が発生して動作の不安定などにつながり、本末転倒だ。
というわけでアプリに添付のヘルプファイル(「Help」メニューから呼び出せる)では、最低でもシステム用に2.5GBのメモリーを残すことが推奨されている。ちなみに僕の場合はメモリー搭載量が4GBのMacBook Airでこの設定の割当は512MBにしており、動作は安定している。
・For bridge devices connected to a DAC
さて「Audio System」タブの最後は、「For bridge devices connected to a DAC」欄だ。
ここについては「Max sample rate limit」は「No limit」、「spl rate switching latency」は「None」という、どちらもデフォルトの設定のままでOK。ヘルプを参照したところこれらは、少し特殊なDACを接続した場合にその調整に必要な設定のようだ。
ここまででもかなりのボリュームになってしまったが、続いてはやっと「Audio Filters」タブの説明だ。
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