[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第35回】Mac用高音質プレーヤー「Audirvana Plus」使いこなしテクニック
■「Audio Filters」タブの設定を徹底解説
・Sample Rate Conversion
「Sample Rate Conversion」はその下の欄で設定するアップサンプリング処理を、「Apple Core Audio」かそれとも「iZotope 64-bit SRC」か、どちらの処理エンジンで行うかの選択。アップサンプリングとは、例えば44.1kHzの音声データを倍の88.2kHzなどに変換することで音質面での優位を得ようという機能のことだ。
ここは迷わず後者「iZotope」をおすすめする。システム標準のCore Audioよりも処理の負荷は少し重いが、その代わりにより高精度な処理が行われる。せっかくアップサンプリングを行うのなら、少しでも音が良い(はずの)方を使うべきだろう。実際にiZotopeで処理した方が、微妙な差ではあるが、音色に好ましい意味での明るさやチャキッとしたキレを感じられる。
その下の「Quality」はアップサンプリング処理を処理の軽さ重視にするか処理のクオリティ重視にするかの設定。ここもどうせやるなら「Best」側で使いたいところだ。
なおiZotopeを選ぶとその下に「Advanced parameters」欄が追加表示されるが、ここはかなりマニアックな設定で、僕も把握しきれていない。下手に動かさないことをおすすめしておく。
・Forced Upsampling
次の「Forced Upsampling」は、アップサンプリングの倍数の設定だ。
ここの設定の選択肢は、
1)None:アップサンプリングを行わない
2)Power of 2 oversampling only (2x, 4x, …) 2倍・4倍…で行う
3)Maximum sample rate upsampling 上限まで行う
4)Oversampling 2x only 2倍に固定して行う
の4つだ。
例えば192kHzまで対応のDACで44.1kHzの曲を再生する場合、
1)None:44.1kHz
2)Power of 2 oversampling only (2x, 4x, …) 176.4kHz
3)Maximum sample rate upsampling 192kHz
4)Oversampling 2x only 88.2kHz
にアップサンプリングされる。
それぞれの利点としては、
1)処理を減らしてダイレクトな音質を狙える
2)整数倍の素直なアップサンプリングで素直な効果を狙える
3)最大限のアップサンプリングで最大限の効果を狙える
4)PCへの負荷を最小限に抑えつつ十分な効果を狙える
といったところだ。
僕はエレクトリックギターのザクザクと荒いキレや硬質な艶、ベースやドラムスの圧力を生かせる印象の「None」を、普段は使っている。しかしアップサンプリングをオンにした際の、細かな音が浮かび上がり、その広がりもより引き出される様も魅力的だ。ここは各自一通り試してお好みで選んでほしい。
なお僕の環境ではどの設定にしても特に問題はないが、ここの設定で動作の安定度が変わるという報告も見かけることがある。トラブル時にはチェックしてみてほしい。
・Audio Signal Polarity
最後に「Audio Signal Polarity」であるが、これは音声信号の位相を反転させる設定。ここは特に意図がない限りは動かす必要はない。
さて以上で、Audirvana Plusで音質と安定性に特に関わると思われる2大設定タブの解説は一通り完了だ。これらの設定を詰めることで、Audirvana Plusをあなたの音の好みや利用環境に最適化することができる。余裕のある休日にでも、色々と実験しつつそれに挑戦してみてほしい。
高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi 趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。 |
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