[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第65回】ソニーのハイブリッドイヤホン「XBA-Hシリーズ」3機種を徹底聴き比べ
・XBA-H1
レッチリのドラマー、チャド・スミスさんが率いるインストバンドBombastic Meatbatsの「Need Strange」は、やはりまずはドラムスに注目せざるを得ない。その抜けや音圧、迫力の再現性はシリーズのエントリーであるこのモデルで、すでに見事と言えるレベル。特にバスドラムのアタックの良さのおかげで、グルーブの土台が明確。このあたりは、ほどよい口径のダイナミック型ドライバーの強みが発揮されている。ベースも余計な膨らみがなくしかし痩せてはおらず、クリアな音像で堅実な描写だ。
高音側では、シンバルは薄刃すぎずほどよい厚みのある音色。その厚みと抜けは両立されており、厚ぼったい音色にはなっていない。クラッシュシンバルやスネアドラムの強打のバシンと濁点を効かせた荒っぽい炸裂感も表現できている。
Daft Punk「Give Life Back to Music」では、このモデルのダイナミック型ドライバーはそれほど大口径ではないにも関わらず、この曲の特徴である全体の分厚さを十分再現してくれることに感心。高音側をBA型ドライバーに任せることができるので、ダイナミック型ドライバー側は低音を重視したチューニングにできているのだろう。もちろん量感やディープさは大口径ドライバー登載の上位モデルに及ばない。とはいえこの口径から出せる範囲の上限に近い低音を十分に出しつつも、それをよく制御された緩みのない低音に仕上げていることは特長と言える。
ボーカルは宇多田ヒカル「Flavor Of Life -Ballad Version-」でチェック。これはとてもよい。声の手触り感を引き出しながらも、その手触りを強めすぎて刺さる成分を出してしまうことはない。ほどよくソフトだ。この感触は既存のBA型XBAシリーズと共通しているので、ソニーBA型ドライバーの持ち味と言えるかもしれない。
なお装着感と遮音性は共に良好。特に遮音性はカナル型イヤホン一般の中でもハイレベルな部類だ。
ところでXBA-Hシリーズの登場に伴いBA型のXBAシリーズは、XBA-10とXBA-40は継続されるものの、XBA-20とXBA-30は販売されなくなるとのこと。個人的には既存のXBAシリーズで最も完成度が高いのはXBA-30と感じているので、残念だ。
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