バランス出力の効果は絶大。純正ケーブルも登場
ゼンハイザー初のヘッドホンアンプ「HDVD 800」「HDVA 600」徹底レビュー
■純正のバランス駆動用ケーブルも登場
さて、ここからは冒頭に申し上げた、両機がバランス出力に対応しているということのメリットについて詳しく見ていこう。
ヘッドホンアンプ2モデルがともにバランス出力に対応しただけでなく、同社は先日HD 800、HD 700、HD 650、のそれぞれに適合する純正バランス駆動用ケーブルも発表した。12月にはこのケーブル各種も発売の見込みとなるため、これまで以上にヘッドホンのバランス駆動に対しての関心が高まるのではないかと期待している。
純正バランス駆動用ケーブルは、HD 800用は「CH 800 S」、HD 700用は「CH 700 S」、HD 650用は「CH 650 S」というモデルがラインナップされるが、いずれもヘッドホン側金メッキプラグとケーブル部の作りはヘッドホン付属のケーブルと同じ仕様だ(CH 800 SとCH 700 Sは銀メッキOFC導体、CH 650 SはOFC導体)。違うのはΦ6.3mmステレオプラグ側がノイトリック製金メッキインサート仕様のXLR 4ピンプラグ(オリジナルシェイプカバー)となっている点で、ケーブルの素性を気にせず、純粋にシングルエンド接続/バランス駆動のサウンドの違いを楽しむことができる。
■バランス駆動のメリットをくわしく知る
ヘッドホンのバランス駆動とは、ドライバーユニットの+極に音声信号の正相成分HOTを、−極にその逆相成分COLDを流す、いわゆるBTL駆動(ブリッジ接続)を行う手法であり、一般的なシングルエンド接続で問題となるL、Rch双方の−極を共通GNDとすることで発生する共通インピーダンスの影響を避けることができる。この共通インピーダンスの問題とは、ドライバー固有のインピーダンスとコードの線間抵抗によってGND電位が変動すること(基準値の変動)が原因となる。左右の音声信号が各々影響を及ぼし、他方のチャンネルへ信号が流れ込むことでクロストークが発生、定位が歪んでしまう。またシングルエンド接続では音声信号がGNDに戻るループが生まれるため、回路の抵抗によるGND電位変動も発生し、混変調歪みも大きくなるという問題もはらんでいる。
ヘッドホンのバランス駆動では左右のチャンネルにHOT、COLD用のアンプを個別に持たせ、GNDには音声信号が戻らない合計4台のアンプで構成されたシステムとなる。この結果前述した問題点を解消するとともに、チャンネルセパレーションの向上が図れるうえ、位相の正確さやS/Nの点でも圧倒的に優位となるのだ。なおBTL駆動時は1台のアンプが信号振幅の+か−側一方の立ち上がり分を担当すればよいため、出力電圧もシングルエンド時の半分となり、目的電位に達する時間も短くなる。そのため応答速度が上がり、アタックやリリースの特性も向上するのだ。