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【特別企画】1万字インタビュー+徹底試聴レポート

B&W新600シリーズはCMを超えたのか? D&M澤田氏インタビュー&試聴レポート

公開日 2014/05/22 11:00 レビュー:山之内正 インタビュー:ファイル・ウェブ編集部 小澤貴信
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B&Wのスピーカーシステムのエントリーライン「600シリーズ」が7年ぶりに刷新された。上位モデルで培われた技術を惜しみなく投入したこの新600シリーズを徹底検証する。本記事の前半では、ディーアンドエムホールディングスの音質マネージャーである澤田龍一氏に新600シリーズの要点について伺った。後編では、山之内正氏が新600シリーズのステレオスピーカー4機種を試聴。その音質をレビューする。


■CONTENTS
Part1 音質マネージャー・澤田龍一氏に伺う新600シリーズ刷新の核心
Part2 山之内正が新600シリーズを徹底試聴する
>>新600シリーズのラインナップ概要はこちら(発表会レポート

<Part1>
音質マネージャー・澤田龍一氏に訊く600シリーズ刷新の核心
新600シリーズには、B&Wの現時点で最新の技術が
全て投入されたのです。


B&Wのエントリーラインを担う「600」シリーズが、2007年以来となるフルモデルチェンジを果たした。今回、この新600シリーズ(各ラインナップの詳細はこちら)の中でも特にステレオスピーカー4機種について、ディーアンドエムホールディングス(株)にてB&Wに長年関わってきたマランツ音質マネージャーの澤田龍一氏にお話を伺う機会を得た。「新600シリーズで何が変わったのか」、さらには「新600シリーズはCMシリーズを超えたのか」という多くのオーディオファンが抱く疑問にまで、澤田氏はとことん答えてくれた。

(株)ディーアンドエムホールディングス CSBUデザインセンター マランツ音質マネージャー 澤田龍一氏

■トゥイーターはCMシリーズ最新・最上位「CM10」の技術を踏襲

新600シリーズについて澤田氏が最初に説明してくれたのは、新採用のデュアルレイヤー・トゥイーターについてであった。このトゥイーターは、先行して登場した上位モデルの様々な技術が盛り込まれた革新的なものだという。外装の面では新たに破損防止のネットが取り付けられたこともポイントとなるが、トゥイーターそのものについても、B&Wの最新技術が一挙に盛り込まれた革新的なものとなった。

B&W「683S2」

B&W「685S2」

「新600シリーズに搭載されたトゥイーターは、“デュアルレイヤー”という名称が付けられている通り、アルミドームの外周のみが二重になっているのがポイントです。ドームの強度を上げていくと、当然ピストンモーション範囲が広がります。しかし、ドームの重量がむやみに増えることも問題です。トゥイーターの強度を効率よくアップする方法を考えた結果、周辺を部分的に補強するという方法に至ったのです。この2層構造により、高域のピークを38kHzまで拡張することができました」(澤田氏)。

B&Wは長年、アルミニウム・ドームのトゥイーターを採用してきた。いたずらに固い素材を用いるのではなく、固有音による違和感の少ないアルミを工夫して使うことで、音質を高めてきたのだという。澤田氏はB&Wのトゥイーターの歴史についても触れ、「かつてのB&Wのスピーカーが搭載していたトゥイーターは、高域ピークが可聴帯域ぎりぎりの20kHzでした。他社だと、18kHzくらいまでのモデルがざらにあった時代です」と語る。しかし同社は、銘機「MATRIX 801」において22kHzまでピークを伸ばし、可聴帯域を超えるレンジの再生が可能となった。

その後、35周年記念モデルとして開発された「Signature 800」(2001年)では、ピークを30kHzにまで伸ばすことに成功。「トゥイーターはドームの周辺が弱いので、普通はボイスコイルのボビンをドームに突き当て、当たった部分を接着しています。Signature 800では、ボビンの頭を少し曲げて“のりしろ”を作り、接着面積を広げることで部分的に二重にするという手法を採ったのです。以降、このトゥイーターが全てのB&Wのスピーカーに採用されていきました。新600シリーズでは、そこからさらに進化したトゥイーターが搭載されているのです」と澤田氏は説明する。

新600シリーズの全てのモデルに搭載された「デュアルレイヤー・トゥイーター」

しかし、B&Wがこのような長きにわたって高域特性の改善を続けてきたことは、何もハイレゾ音源に対応するためというわけではない。「可聴帯域である20kHzより手前の特性に影響するからこそ、高域共振周波数をなるべく高い周波数に持って行きたいという思想の元に、高域特性の改善は続けられてきたのです」と澤田氏は強調する。

ピーク周波数が可聴帯域の特性にも影響する理由を、澤田氏は解説してくれた。仮に38kHzが高域ピークとすると、原理的にその1/2にあたる19kHzのところに2次高調波歪が発生する。さらに、1/3である12.7kHz周辺に3次高調波歪が起こる。この原理からすると、高域ピークが20kHzであれば1/2の10kHz、1/3の6.7kHzと、可聴帯域の中で歪みが発生してしまう。

旧600シリーズと新600シリーズのトゥイーターの特性を比較するグラフ。新トゥイーターにより明らかに特性が向上している

ハイカットピークをなるべく上に持ち上げていけば、その1/2、1/3の周波数で起こる歪みも当然、上の帯域に持ち上がる。この歪みの帯域を上げていけば、可聴帯域の外に追いやることができる。だからこそB&Wは、高域ピークを持ち上げる努力を続けているのだ。「スピーカーの音を犬に聴かせるためではないですよ」と澤田氏は笑う。こうした歪みをなるべく高域へ追いやっていくと、トゥイーターの素材であるアルミ固有の音のくせも薄めていくこともできるという。澤田氏は「800 series Diamondに搭載されたDiamondトゥイーターに至っては、高域共振によって発生する歪のポイントがすでに可聴帯域のはるか上なのです」とも付け加えた。

なお、このデュアルレイヤー・トゥイーターは、「CM10」(関連ニュース)で初投入されたものだが、新600シリーズに搭載されたトゥイーターはCM10とまったく同じものとなる。「上級機からの採用となると何がしかのコストダウンが行われる場合がほとんどですが、600シリーズに搭載されているトゥイーターはCM10とまったく一緒なのです。これには予想を裏切られましたね」と澤田氏は、新600シリーズへの驚きを隠さなかった。

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