<山本敦のAV進化論>第14回
【レビュー】大量のハイレゾ音源をすべて持ち運ぶ! 「Wi-Fiストレージ」で快適ポータブルオーディオ
本機ではワイヤレスで最大5台までのモバイル機器から同時アクセスを実現している。複数のユーザーで写真を観賞したり、ドキュメントを共有する時にも有効だ。ラトックシステムの担当者に確認したところ、ハイレゾ再生の場合でも、96kHz/24bitのファイルなら、Wi-Fi Direct接続で最大3台まで問題なく同時接続できたという検証結果が得られているそうだ。
本機は最大2TBまでのUSB-HDDを接続して使うことが可能。つまり、大容量のUSB-HDDにハイレゾ音源をめいっぱい詰め込み、それを持ち運んでiPhoneなどからワイヤレス再生する、ということが可能になるわけだ。ファイルサイズが大きいハイレゾ音楽のアーカイブを携帯しながら楽しむのに、非常に便利なアイテムと言えそうだ。
なお、本体からHDDにバスパワー給電も行え、フル充電時では約2〜3時間の駆動ができる。自宅で使う際には本体をコンセントに差しっぱなしにしておけばよいし、その際には充電もできて便利だ。
■サードパーティアプリ「Yardbirdsプレイヤー」でハイレゾ再生がより快適に
唯一残念なのは、ラトックのWiDrawerアプリの音楽プレーヤー機能がシンプルすぎること。カバーアートの表示には対応しているものの、コントロール機能は再生と停止、曲送りとシークエンスバーによるサーチ、ループ再生が設定できるだけと少し寂しいメニュー構成だ。そこで今回は、Wi-Fiストレージアダプターに対応するほかのハイレゾプレーヤーを使ってみた。
Rikki Systems社がiOSデバイス向けに提供する「Yardbirdsプレイヤー」は、ラトックシステムのWi-Fiストレージをサポートするハイレゾ対応のプレーヤーアプリ。有料500円でAppStoreから購入できる。
Wi-Fiストレージ上の音楽ファイル以外が不可視化でき、フォルダ/ファイルを名前やサイズなどの条件でソートしながら、目当てのファイルをツリー構造から辿っていけるスムーズなUIがよい。プレーヤーの画面には再生中楽曲ファイルのフォーマットやサンプリング周波数とビットレート、カバーアートなども表示される。プレイリストの作成も可能だ。さらにアナログ風のVUメーターが表示されるのも洒落ている。
再生可能なハイレゾのファイルは最大192kHz/24bitまでのWAV/ALAC/AIFF。残念ながらFLAC形式にはネイティブで対応していないため、ラトックのWiDrawerと同様、再生可能な形式に変換したファイルを用意する必要がある。
Wi-Fi Direct、またはホームネットワークでの使用が基本となるが、Yardbirdsアプリの場合、インターネット経由で使用するWebDAVサーバー機能に対応するI-O DATA“挑戦者シリーズ”の「RockDisk」などのNASを併用すれば、ハイレゾ音源をNASに保存しておき、外出先からでもLTE/3G、またはWi-Fiを介してストリーミング再生が楽しめるようにもなる。
この場合ストリーミング再生の安定性はネットワーク品質に依存することになり、LTE利用の場合はデータ容量制限も気にかける必要も出てくるが、iPhone本体内にデータを保存しておく必要がなくなるだけでなく、Wi-Fiストレージを携行する手間まで省けるメリットが得られる。
■ポータブルで楽しむハイレゾがさらに便利になる
iOS端末でハイレゾオーディオ出力が可能になり、Android端末では一部ハイレゾ再生に対応する製品が出てきたとはいえ、データ容量が極めて大きくなるハイレゾの楽曲ファイルをどうやって持ち歩けばよいのか、シンプルな回答はなかった。Wi-Fiストレージに注目が集まる中で、いち早くハイレゾ対応を実現したラトックの取り組みは大いに歓迎したい。
自社アプリ「WiDrawer」の機能向上やFLAC再生対応など、今後使い勝手の向上を望みたい部分もあるが、そのハイレゾ再生をよりいっそう快適にする使い勝手の良さは、ハイレゾ音源の持ち運びに悩んでいる方は、一度体験してみる価値アリと言えそうだ。