<山本敦のAV進化論 第25回>IFAで発表された最新モデルを聴く
日本未発表モデル速報レビュー:ゼンハイザーの定番イヤホン“CXシリーズ” 「CX 5.00/CX 3.00」
再生周波数帯域は17Hz〜21kHzをカバー、インピーダンスは18Ω、音圧レベルは118dB。なお、CX300-IIに比べると周波数帯域が2Hzほど低くなっている。ケーブルは1.2mのY型で、プレーヤー側端子はL字型。キャリングケースのほかにL/M/S/XSのイヤーチップが付属するのはCX 5.00と同じだ。
本機もiPhone 5sをリファレンスにして音質をチェックした。耳に装着した感じは、先代のCX300シリーズと同じくコンパクトな球形のボディは耳穴への収まりもよく、筆者としては好みだ。
ジャズのピアノトリオは中低域の音色がより直接耳の奥を刺激してくるようなダイレクト感がある。ピアノの音色はタッチが柔らかく温かみもある。全体にナチュラルな音調で、帯域のバランスもよくコントロールされている。高域の伸びや解像感はCX 5.00に譲る印象だが、力強さとエネルギー感では本機により特色があるように思う。
オーケストラは演奏のエッセンスを凝縮させたような密度の濃いサウンド。中低域は膨らみすぎず、タイトなアタックと脚力がある。フォルテッシモのパートではCX 5.00のように広大なイメージを再現するようなタイプではなく、中域を中心にエネルギーの束をまとめて放出してくるような印象。音像はだぶつくことなくシャープに引き締まっている。
ロック・ポップスのボーカル曲は肉厚な声質が特徴。生命力のあるサウンドが直接耳の奥に飛び込んでくるようなイメージだ。演奏の力強い部分と細かい部分との描き分けのセンスも良い。音像はタイトにカッチリとまとまっている。街歩きをしながら使ってみると、CX 3.00のもう一つの魅力が見えてきた。装着時の密閉性が高いうえ、力強い中低域のサウンドが、外部ノイズをしっかりとマスクすることで、ボーカルの声やリズムセクションのサウンドがより一層引き立ってくる。クラシックでは楽器の音色の色鮮やかさが増すようだ。ぜひポータブルリスニングで積極的に活用したいイヤホンだ。
■全てのパフォーマンスをワンランク上げてきた定番モデル
CX 5.00とCX 3.00の2機種を比べてみたが、音のキャラクターがかなり異なると感じた。互いを聴き比べてみると、どちらかと言えばCX 5.00はオールマイティな再現力を持っているのに対して、一方のCX 3.00は音楽の生命力をより濃く伝えてくるパワーが持ち味だと思う。
先に音質をレポートした「MOMENTUM In-Ear」(関連記事)も含めて、ゼンハイザーのラインナップに個性的なイヤホンが加わった印象だ。低域は、いたずらに強さを強調するのではなく、全体のバランスを鑑みた時の「存在感」をきちんと前面に打ち出していこうというアプロー。現代的なユーザーのライフスタイルや音楽を聴く際のシチュエーション、音の志向など、深く研究しながらパフォーマンスを作り込んできた。
当たり前のことだが、ヘッドホン&イヤホンによる音楽リスニングは、スタイルも音楽のジャンルもユーザーの好みによって千差万別だ。様々なユーザーの音の好みをフォローしながら、低域だけでなく、基本的な音楽の再生能力をワンランク底上げしたという確かな手応えを、新しいCXシリーズから感じることができた。デザインやハンドリングの良さも含め、次世代の定番モデルになりそうだ。