[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第102回】“当世ポタアン事情” <後編> いまどきポタアン3機種まとめてレビュー
▼Onkyo「DAC-HA200」
前述のようにその概要は、サイズ感にしても機能性にしても典型的な「いまどきのポタアン」だ。ポタアンとしての利用時にはiOS機器とのLightningデジタル接続とAndroid機器とのUSBデジタル接続に対応。またUSB-DACとしてPCと接続してのハイレゾ再生にも対応。うん、よい意味で普通だ。いまどきのポタアンに求められる要素を堅実に満たしている。
しかし!実はこのポタアンには「プラスα」がある!iPhoneとのLightningデジタル接続時にもハイレゾ再生が可能なのだ!同社のハイレゾ再生アプリ「HF Player」との組み合わせで96kHz/24bitのハイレゾ再生が実現する。
現状、iPhoneと接続してハイレゾ再生可能というポタアンの多くは、iPhoneとポタアンの間にLightningカメラコネクションキットというアダプターを挟んでの接続が必要だ。しかしこれは接続が煩雑になるし、ケーブルの取り回しもしにくくなる。つまり「ポータブル」性に少し難があるというわけだ。
対して本機はLightningケーブルのみの直結でハイレゾ再生可能。96kHz/24bitまでの対応というのはスペック的にはやや見劣りするが、現実的には(実際の音質面においては)ポータブルオーディオとして致命的な問題ではないだろう。
では写真を並べつつ解説していこう。
音質チェックは、iPhone 5で同社のハイレゾ対応高音質再生アプリ「HF Player」を利用して本機にはLightning直結、イヤホンはShure「SE846」という環境で行った。
もちろんだが、iPhone単体での再生からは全面的に明らかな向上を実感できる。中でもまず最初に印象的なのは中低域の充実だが、しばらく聴いているとより印象的に感じられてくるのは、声の透明感だ。
全体を見たときの印象としては中低域の厚み、それによる低重心さがポイント。といっても過度な低音重視ではなくもったりと鈍重な感じにはならないので安心してほしい。誰が聴いても「これは低音を出してきてるな!」とわかるくらいにしっかり低音を打ち出しつつ、しかし「これは低音を出し過ぎているな…」とまでは感じさせない。このあたりの節度というかさじ加減は、さすが歴史あるオーディオブランドだ。
低音の量についてそうであるように、質についてもさすが。例えばベースは少し大柄にして場面によってはブォンという唸りを強調したりもするが、それでいて他の楽器を邪魔することはない。音の感触はややソフトに思えるが、ぼんやりとした柔らかさではない。ベースが低い音域で細かく動く場面でも、その動きを滑らかにクリアに届けてきてくれる。スタッカートの再現も、特別に優秀ではないが損ねることもなく十分に確保。低音楽器は太さや量感を確保しつつ、「キレキレではないがボワンボワンでもない」ところに巧く落とし込まれている。
中域あたりも充実しており、ギターやシンバルも良質な肉厚さ。特にメタリックなディストーションギターは、その厚みに加えて倍音の柔らかな豊かさも見事。ザクザクした硬質なエッジ感とは違うのだが、これはこれでギターの音として魅力的だ。ピッキングハーモニクスの伸びやかさというか突き抜けっぷりもよい。
そして本題の声。主にはやくしまるえつこさんと坂本真綾さんを聴いたのだが、そこ高域のシャープな成分を上質にほぐして嫌な刺さりなくしつつ、しかしシャープさも残してある。なので優しいのだけれど凛としているし強さもある感じだ。また声の透明感も際立つので、ここもポイント。
なお前述のように本機には、共通の基本設計で音質チューニングが異なるTEAC「HA-P50」という兄弟機が存在する。本機の機能面等は好みなんだけれど音質傾向は好みではないかも…という方はそちらもチェックしてみてほしい。
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