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【連続レビュー第1回】

マークレビンソンから待望のデビュー、USB-DAC内蔵プリメイン「No585」を角田郁雄が聴く

公開日 2014/10/20 10:45 角田郁雄
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ミュージック・コンソール・アンプと呼ぶに相応しい卓越した回路構成

最初にNo585の内部を観察して、正直驚いた。全体の眺めは整然としているのだが、アナログプリアンプ部、DAC部などの細部を探ると、音を極めるための細かなサーキットデザインが見てとれる。いずれのステージにおいても、ほんのわずかな歪み感や、瑞々しく倍音豊かなハイレゾ音源の音を阻害する成分を除去する技術が細部にわたり搭載されている。つまり、マッシブなパワーアンプのなかに高品位なアナログプリアンプとDACをビルトインすることにより、セパレート型アンプ以上の高いS/Nの実現、ハイスピードな伝送とレスポンスの高い増幅を狙っていることが窺えるのである。

スピーカーシステムにはJBLの“Project K2”「S9900」を組み合わせ、最高の環境でNo585の音質を試聴した

マークレビンソンらしい魅力に溢れたコンストラクションであり、ハイエンドなスタジオクオリティーを実現している背景を実感した。No585は、いわゆるDAC内蔵のプリメインアンプというような単純なものではなく、美しいデザインを湛えた“ミュージック・コンソール・アンプ”という表現を連想させるのである。

なお、No585はRCAのプリアウトが可能で、サブウファーと接続できるモードも搭載している。SSPモードを使えば、パワーアンプとして動作させることも可能である。

格別の解像感と倍音の再現性がデリカシーある表現を可能にする

No585の試聴は、輸入元のハーマンインターナショナルの試聴室で行った。リファレンススピーカーはJBLの“Project K2”「S9900」、SACDプレーヤーはマークレビンソンの「No512」だ。ハイレゾ音源のUSB再生には、私のMacBookPro(SSD搭載)を使用した。

私はまず、イザベル・ファウストの『J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータ BWV 1001-1006』のシングルレイヤーSACDを再生した。透明な空間を背景に芳醇な響きが漂い、彼女が使用するストラディヴァリウス「スリーピング・ビューティー」の魅力が存分に味わえる。ボウイングのさまがリアルに描かれる解像度の良さも格別で、弦を弓で擦る力加減を克明に聴かせ、細かな響きまでも空間に広がる。優れた倍音の再現性に感激する。またS/Nの高い特性により、弱音に濁りがなく、深く沈み込む旋律はデリカシーを感じさせる。

【SACD】イザベル・ファウスト『J.S.バッハ : 無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータ BWV 1001-1006』(シングルレイヤーSACD、HMSA0018、キング・インターナショナル)

【SACD】飯森範親:指揮、山本真希:オルガン、東京交響楽団『サン=サーンス : 交響曲 第3番 ハ短調 Op.78 「オルガン付き」』(シングルレイヤーSACD、RYUTSA-0001、りゅーとぴあ)

次に『サン=サーンス:交響曲 第3番 ハ短調 Op.78「オルガン付き」』のシングルレイヤーSACDの第2楽章の後半を再生した。冒頭のオルガンは、音の波が押し寄せるような、ただならぬ音圧感を示す。弦楽パートでは、木質感たっぷりの響きと重厚さを聴かせてくれる。圧巻は3分過ぎたところのグランカッサ(大太鼓)の一撃である。ボトムエンドを打つような強烈で壮大な音に、No585の優れた瞬発力とスピーカー制動力の高さを実感する。まさに熱狂の演奏がクローズアップされるのである。

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