<山本敦のAV進化論 第28回>開発者訪問&試聴レビュー
ハイレゾ・ウォークマン 新旧ガチンコ対決!新「Aシリーズ」は「F880」を超えたか?
ダイナミックレンジがグンと広がり、情報量が分厚くなるとともに演奏の隅々まで見晴らしがさらに良くなる。F880との組み合わせでは、エッジの立った音が丸くなって低域の滑らかさが増すような印象を受ける。要するに「別物の音」になる感覚があるが、Aの場合は音質そのものに変化はなく、元からのバランスの良さがそのまま反映されながら、力強さと生命感が高まるような印象だ。
ダフト・パンクは低域が重厚さを増して土台がしっかりするぶん、ボーカルをはじめ中高域の音像がより明確に定まる。ジャズはベースラインに厚みが増して響きもストレート。余韻の伸びやかさが倍増する。バンド演奏のハーモニーも厚みを増す。強いて言うとAシリーズのウィークポイントとも言える部分を上手に補ってくれるアンプで、絶妙なコンビネーションだ。ピアノの音色がわずかに奥へ引っ込む印象もあるが、中域を中心とした音の出方のバランスが揃う。
他に様々な曲を聴いてみても、PHA-3はAの特徴であるナチュラルなサウンドバランスをよりいっそう引き立たせてくれるアンプであることがわかる。Aシリーズでハイレゾ入門を果たしたら、次に環境のステップアップとして狙いたいパートナーだ。
■音楽再生専用機ならではの使いやすさが実感できるウォークマン
昨今ではスマートフォンも、ソニーの「Xperia Z3」をはじめハイレゾ対応が広がっている。一般の音楽ファン向けハイレゾプレーヤーという観点から見れば、こうしたスマートフォンもAシリーズにとってライバルの一つになるかもしれない。
ただ、使い勝手がシンプルで、バランスの整ったサウンドに一度触れてしまうと、やはり音楽再生に特化したウォークマンの価値が改めて実感できる。フルデジタルアンプ「S-Master HX」の搭載も含め、音楽専用機ならではのこだわりも随所に盛り込まれている。
使い勝手の面でも、音楽再生中に着信が来たりなど、スマートフォンでは何かとリスニングに集中しづらい部分もある。動画再生や通話など、音楽再生の他にバッテリーを消費する用途も多い。ならば、ゆっくりと音楽に浸れる再生専用機をスマホと別に持ち歩くことの意義は十分に大きいはずだ。
新しいAシリーズは単なる普及機ではない。まさにソニーにとってのハイレゾ展開の「第2段階」が始まったことを告げる重要なマイルストーンとなるウォークマンだ。既にほかのハイレゾ・ポータブルプレーヤーを所有している方も、Aシリーズの音をぜひ一度はチェックすべきだ。