<山本敦のAV進化論 第41回>
パナソニックのテレビに採用される「Firefox OS」。その特徴と可能性をMozillaに聞く
「実際にあるプラットフォームの上で、オープンなものづくりを一緒にやっていこうとすると、開発履歴やバグリスト、プロセスも含めて全てをオープンにすることが大事な違いとして表れてきます」と浅井氏は説く。Firefox OSの場合、開発者が求める機能、ユーザーが欲しい機能を最新のソースにコミットでき、開発中のソースやアップデートの予定もオープンにしながら、現場でのオープン性が実感できる環境を提供しているという。開発環境の優位性が高く評価された結果、現在、Firefox OSは29カ国・15キャリアが採用し、16機種の製品に広がりつつある。
セキュリティの確保やプライバシーの保護についても、Firefox OSは強く意識して作られているという。「スマホのアプリには、ユーザーのプライバシーに関連する情報をアプリ実行時に取得してしまうものがあり、このことが近年問題視されてきました。インターネットの世界ではプライバシー情報を取得する際、必ずユーザーに許可を求めてから行うという共有認識があります。Firefox OSの場合は同じことをモバイルでもきちんと実践するため、アプリをインストールするときだけでなく、実行時に都度プライバシー情報を取得するとアラートする仕組みを、OSレベルに組み込んでいます」と浅井氏は説明する。
Firefox OSのもう一つの特徴は「軽量設計」であることだ。OSはブラウザに最適化されており、様々なアクションをブラウザで完結できる。一方のAndroidやiOSの場合、それぞれのネイティブ環境に合わせてつくられたアプリと、そのアプリができることをほぼそのまま実現するブラウザがあって、実質的に2つのフレームワークが一つのOSに組み込まれていることから、全体としてOSがロードするものが重くなりがちだ。「それならブラウザをフル機能にすれば、Webブラウジングの快適さが増し、OSレベルに組み込んでしまえばパフォーマンスのチューニングがしやすくなり、インターネットを使う端末として最適化しやすい」というコンセプトがFirefox OSにはある。
Android OSはバージョン4.4からRAM 512MB程度の製品でもスムーズに動作するとされているが、Firefox OSの場合は100MB〜256MB前後のRAM環境で動作するのが特徴だ。「Webに最適化されたFirefox OSの軽量性に、スペイン語圏最大の通信キャリアであるテレフォニカが注目し、Firefox OSのパートナーに加わっていただきました。テレフォニカは、スマートフォンがこれから普及する新興国で、100ドル以下の低コスト端末でも快適に動作するOSとして、Firefox OSを搭載した製品を販売しています」(浅井氏)。
新興国向けのローエンドスマートフォンという形に限らず、軽量であるというOSの特徴は、様々な製品やサービスに活きてくると浅井氏は語る。Firefox OSの優位性を、モバイルだけでなくテレビをはじめとしたコンシューマーエレクトロニクス製品や、ホームアプライアンスに向けてもMozillaは訴求してきた。その新しいパートナーとの取り組みが、パナソニックのFirefox OS搭載テレビとして結実したわけだ。
■オーディオビジュアルにFirefox OSが進出してきた
パナソニックは2015年のCESを舞台に、今年北米市場に向けて発売を予定する4K VIERAにFirefox OSを搭載する新ラインナップの追加を発表した。北米モデルのスマート機能は「my Hone Screen 2.0」という名称となり、Firefox OSをベースにしたシンプルなユーザーインターフェースと、リビングで活用するテレビらしい直感的な操作性を実現している。デモを見ると、スマホやタブレットのフィーリングに迫る機敏なレスポンスや各コンテンツへのスムーズな導線を実現したインターフェースの特徴が浮き彫りになっている。国内上陸に期待したいところだ。