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井上千岳氏がレビュー

ラックスマンの新セパレート「C-700u/M-700u」が到達した地平。「無色透明」の実体感とは?

公開日 2015/03/12 09:00 井上千岳
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「C-700u」「M-700u」は他にも大容量電源を採用するが、これはプリにもパワーにも共通する。また、カスタムパーツを多用し、高品位化を進めている。筐体は以前から採用されてきたループレスシャーシ構造とし、アース電位の上昇や磁界の影響排除などを確実なものとする。底部にはグラデーション鋳鉄によるレッグを装着した。これらも全て両機に共通する特徴である。なお「C-700u」にはバランス入力のホット/コールド切り替え機能がある。ソース側やパワーアンプ側に切り替え機能のないケースが多いので、些細なことのようだが大変助かる。

C-700uの電源回路

M-700uの電源回路

ハイスピードかつ無色透明。S/Nもさらに向上させた

さて、多くのユーザーが気にするのは、上級機900シリーズとの音質の違いであろう。全く同じなはずはないが、かといってかけ離れたものでもない。その差の程度がどうかという点が、興味の対象になりそうだ。

大雑把な言い方をすると、現在のラックスマンの音は世界的に見ても最もハイスピードで無色透明なものである。高低両端まで容赦なく伸びて色というものがまるで感じられないし、瞬発力が非常に高いため出てくるエネルギーが強い。これを突き詰めると900シリーズの音になると言ってよく、そこではいわゆるケレン味というものが全くない。

「C-700u」

背面端子部

筆者は以前、この音が本当にわかるユーザーはそう多くないのではないかと危惧したことがある。結果的には好評で売れ行きも上々であったそうだから杞憂に終わったようだが、それくらい900シリーズの音は厳しく、またありのままのものであった。

この700シリーズでも、基本的には同じ方向である。というより、音に味を付けるという意識が、現在のラックスマンにはおそらく皆無なのである。技術的に正しいことを積み重ねて、結果的に出てきたのがその製品の音である。それ以上に色を加えた形跡がない。

「M-700u」

背面端子部

結局700シリーズの音も無色である。レンジが広く、エネルギーバランスが平坦であるのはむしろ当然とも言える。そしてS/Nが確実に以前のシリーズよりも向上した。さらに立ち上がりが速い。これも旧機に倍加したような印象さえ受ける。

上位機の厳しいまでのサウンドに対し、700シリーズには親しみや優しさもある

こうした出方は、900シリーズと相似形である。ただわずかに違うのは、わかりやすさ、あるいは近寄りやすさといったことだろうか。この2モデルには900シリーズにはないある種の親しみや優しさを感じる。

例えばボーカルにはそれが端的に表れている。バックのインストルメンタルが生々しく浮かび上がり声の表情が時に甘く時に清々しく変化する様子はスタジオの中で聴いているようにリアルだが、ピンと張りつめたような緊張感より柔らかさが先に来る。だからといって曖昧なわけではなく、ピントがぴたりと合って存在感が鮮明だ。そこに肉質感の誇張や甘ったるさはないが、だからこそ実体感が高いのである。

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