徹底したデュアルモノ構成を採用
エソテリックの準旗艦プリ「C-02X」&パワー「S-02」をレビュー - Grandioso直系の技術を凝縮
■独自回路のLIDSCを搭載する「S-02」
S-02は、Grandioso「S1」直系のパワーアンプである。何より重量級の高剛性シャーシが、そのことを最もよく表している。ボトムシャーシは5mm厚の鋼板とし、内部は2mm厚の鋼板で堅牢な構造体を形成する。容量の大部分は電源部と言っていいが、回路ごとに専用コンパートメントにブロック化された設計だ。さらに2層に分かれ、立体的に接続することで信号経路を最短化する。
出力回路に搭載された大電流型トランジスターLAPTも、エソテリックの特徴のひとつである。もちろんフラグシップにも採用されているが、瞬間動作で34Aという電流供給量を持つ。本機ではこのパワー素子を5パラレル・プッシュプルとして出力段に装備。定格8Ωで145W×2、実用最大では2Ωで580W×2という強力なパワーを得ている。
注目されるのはドライブ段の2段目に採用されたLIDSCという独自の回路で、出力段へ入る際のインピーダンスを低減する働きがあるという。低インピーダンス・ドライブを可能とすることで電流供給能力を高め、同じ電源電圧の範囲内であっても豊富な電流を流すことができる。モノラル機に比べてスペースに余裕のないステレオ機でも、それに匹敵するようなパワーを実現する設計である。
入力はバランス構成のバッファーアンプで受け、内部のインピーダンスを低減する。また出力インピーダンスを下げるため全段で9本ものバスバーを使用し、保護用の出力コイルも外してダンピングファクターを1,000まで向上させた。
電源トランスはS1とは違ってトロイダル型ではなく、EI型としている。これを先に触れた5mm厚の鋼板シャーシに強固に取り付け。コンデンサーは大容量のデュアルモノ構成とし、配線には極太線を使用するなどして電源インピーダンスの低減を図っている。
■高いS/Nと解像力を豊かなパワーで引き出してくれる
いつもの試聴ディスク(CD-R1枚にまとめてある)のほかに、今回は最近気に入っている2枚を持ってきた。ひとつはエンリコ・オノフリによるヴィヴァルディの「ラ・フォリア」、もう1枚は同じくヴィヴァルディで新イタリア合奏団による「グローリア」。岡山バッハカンタータ協会のコーラスも入っている。
その「ラ・フォリア」は古楽器による演奏で、やや細身で張りのある音色がよく表現されている。その響きの美しさは一聴して誰しもまず感じることだろうが、これが重厚なアルミの筐体ならではのものであることは間違いない。それに高度なS/Nと微小レベルのデリカシーに富んだ解像力(プリ/パワーともに)も寄与している。この演奏にはハープやバロック・ギターも参加しているが、歯切れがよくしかも繊細だ。またバロック・チェロの瑞々しさと弾力的な質感も丁寧に引き出されている。瀟洒な雰囲気に富んだ再現である。
一方の「グローリア」も、繊細感が濃厚に漂う鳴り方になっている。しかし立ち上がりの手触りはエキセントリックではなく比較的おとなしい。歯切れのよさはそのままだが、コーラスの柔らかな女声の広がりや端正なハーモニーが空間にしみ渡ってゆくようだ。
折角の機会だからぜひこの2枚を聴いてみたかったわけだが、緻密で豊かな響きがバロックの魅力を新鮮に感じさせてくれた。
さていつもの試聴曲に戻って、ピアノはその中でも基本である。タッチの芯がクリアで響きが非常にたっぷりしている。楽器の周囲に立ち込めるような余韻が音場を感じさせる再現と言っていい。ピアノそのものにスポットを当てるというよりも、空間全体がふわりと浮かんで出てくるような感触だ。本2機に限らず、この感覚がエソテリックの特に上位モデルに特有のものであるように思える。
オーケストラもホール全体の雰囲気が色濃く引き出されているが、アンプとしての性能で強く感じたのはパワーの豊かさだ。トゥッティでは当然大音量になるが、そのダイナミズムの幅が広く強弱の起伏に余裕がある。音がぐーっと大きくなるそのときのせり上がり方が普段より一回り強いのだ。どこまで出るのかという印象がある。また低音弦の解像度も明瞭で、色彩の豊富な音調である。
ジャズでもこうしたダイナミズムが生きて、勢いがいい。トロンボーンの立ち上がりが細かく、そして力強い。瞬発力が高く、表情が綿密で強靭である。ボーカルも濃密な出方で、ことによると濃すぎると言われそうなほどである。
力感と量感。これを微細な情報でコントロールしながら、表面をたっぷりとした響きで彩っている。エソテリックの表現力が全開となったイメージである。
(井上 千岳)
S-02は、Grandioso「S1」直系のパワーアンプである。何より重量級の高剛性シャーシが、そのことを最もよく表している。ボトムシャーシは5mm厚の鋼板とし、内部は2mm厚の鋼板で堅牢な構造体を形成する。容量の大部分は電源部と言っていいが、回路ごとに専用コンパートメントにブロック化された設計だ。さらに2層に分かれ、立体的に接続することで信号経路を最短化する。
出力回路に搭載された大電流型トランジスターLAPTも、エソテリックの特徴のひとつである。もちろんフラグシップにも採用されているが、瞬間動作で34Aという電流供給量を持つ。本機ではこのパワー素子を5パラレル・プッシュプルとして出力段に装備。定格8Ωで145W×2、実用最大では2Ωで580W×2という強力なパワーを得ている。
注目されるのはドライブ段の2段目に採用されたLIDSCという独自の回路で、出力段へ入る際のインピーダンスを低減する働きがあるという。低インピーダンス・ドライブを可能とすることで電流供給能力を高め、同じ電源電圧の範囲内であっても豊富な電流を流すことができる。モノラル機に比べてスペースに余裕のないステレオ機でも、それに匹敵するようなパワーを実現する設計である。
入力はバランス構成のバッファーアンプで受け、内部のインピーダンスを低減する。また出力インピーダンスを下げるため全段で9本ものバスバーを使用し、保護用の出力コイルも外してダンピングファクターを1,000まで向上させた。
電源トランスはS1とは違ってトロイダル型ではなく、EI型としている。これを先に触れた5mm厚の鋼板シャーシに強固に取り付け。コンデンサーは大容量のデュアルモノ構成とし、配線には極太線を使用するなどして電源インピーダンスの低減を図っている。
■高いS/Nと解像力を豊かなパワーで引き出してくれる
いつもの試聴ディスク(CD-R1枚にまとめてある)のほかに、今回は最近気に入っている2枚を持ってきた。ひとつはエンリコ・オノフリによるヴィヴァルディの「ラ・フォリア」、もう1枚は同じくヴィヴァルディで新イタリア合奏団による「グローリア」。岡山バッハカンタータ協会のコーラスも入っている。
その「ラ・フォリア」は古楽器による演奏で、やや細身で張りのある音色がよく表現されている。その響きの美しさは一聴して誰しもまず感じることだろうが、これが重厚なアルミの筐体ならではのものであることは間違いない。それに高度なS/Nと微小レベルのデリカシーに富んだ解像力(プリ/パワーともに)も寄与している。この演奏にはハープやバロック・ギターも参加しているが、歯切れがよくしかも繊細だ。またバロック・チェロの瑞々しさと弾力的な質感も丁寧に引き出されている。瀟洒な雰囲気に富んだ再現である。
一方の「グローリア」も、繊細感が濃厚に漂う鳴り方になっている。しかし立ち上がりの手触りはエキセントリックではなく比較的おとなしい。歯切れのよさはそのままだが、コーラスの柔らかな女声の広がりや端正なハーモニーが空間にしみ渡ってゆくようだ。
折角の機会だからぜひこの2枚を聴いてみたかったわけだが、緻密で豊かな響きがバロックの魅力を新鮮に感じさせてくれた。
さていつもの試聴曲に戻って、ピアノはその中でも基本である。タッチの芯がクリアで響きが非常にたっぷりしている。楽器の周囲に立ち込めるような余韻が音場を感じさせる再現と言っていい。ピアノそのものにスポットを当てるというよりも、空間全体がふわりと浮かんで出てくるような感触だ。本2機に限らず、この感覚がエソテリックの特に上位モデルに特有のものであるように思える。
オーケストラもホール全体の雰囲気が色濃く引き出されているが、アンプとしての性能で強く感じたのはパワーの豊かさだ。トゥッティでは当然大音量になるが、そのダイナミズムの幅が広く強弱の起伏に余裕がある。音がぐーっと大きくなるそのときのせり上がり方が普段より一回り強いのだ。どこまで出るのかという印象がある。また低音弦の解像度も明瞭で、色彩の豊富な音調である。
ジャズでもこうしたダイナミズムが生きて、勢いがいい。トロンボーンの立ち上がりが細かく、そして力強い。瞬発力が高く、表情が綿密で強靭である。ボーカルも濃密な出方で、ことによると濃すぎると言われそうなほどである。
力感と量感。これを微細な情報でコントロールしながら、表面をたっぷりとした響きで彩っている。エソテリックの表現力が全開となったイメージである。
(井上 千岳)