【特別企画】電圧15V・広Dレンジ・低インピーダンス
“IEM向け”に開発された注目のアナログポタアンALO audio「Rx」の実力検証
■いよいよ試聴!Unique Melody「MAVERICK」とWestone「ES60」で試す
まず用意したのはUnique MelodyのユニバーサルIEM「MAVERICK」である。低域にダイナミック型とBA型のハイブリッド構成を用い、中域×1+高域×2のBA型ドライバーを搭載するという、独特な配置が特徴だ。AK120直挿しでもインピーダンス的には十分余裕があるのだが、低域方向へのフォーカスが甘くなる傾向になる。管弦楽器やボーカルの輪郭感はくっきりと浮き上がり、オーケストラのハーモニーも爽やかだがどこかパワー感が不足する印象だ。
ここで改めてRxを繋いで聴いてみたところ、全体的に解像度や密度の高いサウンドとなり、個々の帯域の音の繋がりがスムーズに感じられるようになった。管弦楽器のハーモニーも粒立ち細かく、余韻もすっきりと抜けてゆく。ボーカルの肉付き感もナチュラルで、ピアノのタッチも鮮度良くクリアで輪郭感も明確に伝わってくる。直挿しでは不満の残った低域の表現も締まり良いものとなり、エレキギターのボトムやドラムの胴鳴りも弾力良くまとめながらも、芯の際立ちのはっきりとした描写を見せてくれた。
続いて、BA型3ウェイ6ドライバー(低域×2、中域×2、高域×2)のカスタムIEM、Westone「ES60」でも試してみたが、こちらはよりニュートラルさが際立ち、密度や音像のしっかりとした佇まいが分かりやすくなるようだ。倍音表現も素直で、高域にかけて誇張もなく伸びやかに表現してくれる。低域方向はフォーカスをしっかりと感じさせながらも厚みをしっかりと感じさせる絶妙な低重心バランスで、安定感の高い落ち着いたサウンド傾向を持つ。シンバルやホーンセクションの響きもアバレがなくなり、耳当たり良く感じられる。ピアノのボディも豊かに響くが、厚みとクリアな輝き感のバランスが取れており、非常に聴きやすい。低域方向への伸びも深く、ジャズピアノではウォームなタッチを味わうことができた。
ボーカルのナチュラルさはMAVERICKより高いように感じられ、口元はくっきりとして質感も滑らかで、艶ハリをほんのりと効かせた描写となる。ハイレゾ音源ではより瑞々しい、クリアなディティールも加わり、よりリアルさが増した。オーケストラの解像度と密度の両立も見事で、ローエンドのエナジーも高いが、管弦楽器の細やかなタッチを消すことなく、自然に際立たせてくれる。
いずれのIEMも基本は色付けないサウンドが特色であるが、Rxを加えることでその持ち味をそのままに、付帯感の無いストレートなサウンド性を軸に再生レンジを拡大。さらにそこへ駆動力を添えてくれるかのような、絶妙なパワーアシスト役に徹する印象を持つことができた。ゲイン切り替えもないシンプルな操作系であるにも拘らず、高感度なIEMも違和感なく自然な音量感で味わうことができる上、適度に倍音の艶を漂わせる、巧みなサウンド作りに好感を覚える。Rxはポータブルプレーヤー単体でのサウンドに満足できないリスナーにまずは試していただきたい、基礎体力十分なスタンダード・ポタアンとしてお薦めしたい。
■試聴音源
・レヴァイン指揮/シカゴ交響楽団『惑星』〜木星(CDリッピング:44.1kHz/16bit・WAV)
・オスカー・ピーターソン・トリオ『プリーズ・リクエスト』〜ユー・ルック・グッド・トゥ・ミー(CDリッピング:44.1kHz/16bit・WAV)
・デイヴ・メニケッティ『メニケッティ』〜メッシン・ウィズ・ミスター・ビッグ(CDリッピング:44.1kHz/16bit・WAV)
・Suara『星座〜アコースティックVer.〜』(Suara USBメモリーカード付属音源:96kHz/24bit・WAV)
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