現在のシーンにマッチした外観・音質に進化
【レビュー】ゼンハイザーならではの真価が発揮された「MOMENTUM」第二世代機
■モニター的なサウンドに近づいた印象の「MOMENTUM G」
そして一方のMOMENTUM Gのサウンドであるが、HD25系のトーンも感じさせる中高域の煌びやかさと、現代的なベースの豊かさを同居させたような第一世代の音色から、より安定感のある、ゼンハイザーらしい普遍的なサウンドへの回帰を思わせるものへと変化している。
中低域の密度はそのままに、全体的な解像度の向上を図り、キレ良く伸びやかなサウンドを獲得。中高域にかけての艶っぽさを生む倍音の華やかな部分も失われておらず、音像における輪郭表現の助けとなっているようだ。なお、AK Jr単体でMOMENTUM Gを駆動するのは多少荷が重いようなので、こちらに関してはOPPO「HA-2」をアナログ接続して試聴を行った。
レヴァイン指揮/シカゴ交響楽団『惑星』収録曲「木星」(CDリッピング:44.1kHz/16bit・WAV)では管弦楽器のキレ良くエッジの効いたハーモニーが分離良く浮き上がり、弾力良く引き締まったローエンドの表現によって音場はクリアにまとまる。高域にかけての倍音感は強めだが、ディティール表現が細やかで、ハーモニーも高密度で伸びやかだ。
『飛騨高山ヴィルトーゾオーケストラ コンサート2013』収録曲「プロコフィエフ:交響曲第1番 古典交響曲ニ長調 Op.25 第1楽章」(e-onkyo:96kHz/24bit・WAV)においては、低域の響きがすっきりとまとまり、見通し良い空間が展開。管弦楽器の旋律はほぐれ良く整理され、個々のパートの響きがつかみやすい。ハイレゾらしい高解像度でクリアな音場へ粒立ち細やかなハーモニーが伸びやかに広がる。
イ・ソリスティ・ディ・ペルージャ『ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲集「四季」』収録曲「春」(HQM:192kHz/24bit・WAV)でもキメの細やかな弦楽器のプレイニュアンスを味わえるが、流麗な弦の質感とウェットな余韻の清々しさがより際立つ。低域方向への伸びもしっかりと感じるが、制動良くまとめており、折り目正しい凛としたタッチが強くなる。
オスカー・ピーターソン・トリオ『プリーズ・リクエスト』収録曲「ユー・ルック・グッド・トゥ・ミー」(CDリッピング:44.1kHz/16bit・WAV)においては、煌びやかなピアノのアタックと中低域まできちんと伸びるボディの響きが端正にまとめられており、ハーモニクスを涼やかに表現。ウッドベースのハリ良く滑らかな弦の描写と密度の高い胴鳴りの豊かさもバランス良く、アタック&リリースの的確なドラムの描写も相まって、各々のパートが存在感豊かに浮き上がる。
ロック音源のデイヴ・メニケッティ『メニケッティ』収録曲「メッシン・ウィズ・ミスター・ビッグ」(CDリッピング:44.1kHz/16bit・WAV)では、ディストーションギターやドラム、ベースが硬質なタッチで描かれ、アタックのくっきりとしたスピード感溢れるサウンドが展開。ボーカルもヌケ良く明瞭でシンバルワークもクリアで清々しい。キックドラムのリリースの僅かなふくよかさが耳当たりの良さに繋がっているようだ。
女性ボーカル・EDM系のKOTOKO「→unfinished→」(CDリッピング:44.1kHz/16bit・WAV)においては、弾力良いベースと硬質なアタックを見せるキックドラムの音色によってタイトなビートを描き出す。ギターやシンセはソリッドで切れ味鮮やかなエッジを持たせた鳴り方で、高域にかけての倍音はキラキラと浮き上がる。ボーカルのボトムはほんのりと厚いが、口元の輪郭は艶良くクールに描き、音像はシャープに定位。立ち上がりの素早い解像感高いサウンドだ。
Kalafina「ring your bell」(mora:96kHz/24bit・FLAC)ではずっしりと響くベースが落ち着きを生む。分離良く浮かび上がるストリングスのスムーズなハーモニーと、ナチュラルな肉付き感を持つボーカルのウェットな音像が爽やかに展開。高域の艶も滑らかに浮き立ち、耳馴染み良いクリアな音色となる。
◇
MOMENTUM Gはモニター的なサウンドに近づいた印象で、程よく倍音を乗せて耳当たり良いアレンジとしているが、基本はHDシリーズ譲りの音像の芯が厚い実直なサウンドを持っていると言えそうだ。一方のMOMENTUM On-Ear Gは、よりコンパクトかつカジュアルに使いこなすツールとして、サウンドについてもノリの良いトレンドに寄り添うゴージャス系の音色が特徴といえる。
現時点の2色展開という段階では、双方の外観における違いはサイズ感とパッド素材が中心となるが、それ以上に音質についての個性の違いは大きく、両モデルを所有し、気分によって使い分けるのも“粋”ではないか。できればさらなるカラー展開を望みたいところだ。
このMOMENTUM 第二世代モデルは世界的に評価されたモダンで洗練されたデザイン性をブラッシュアップし、時代に即したニーズにただ寄り添うだけでなく、ゼンハイザー・サウンドの本筋とはどこにあるのか、その解に真摯に向き合ってチューニングされた、単なる“Mk-2”の枠に収まらない、老舗ブランドならではの真価が発揮されたプロダクトといえるだろう。
またこの2機種はGALAXY対応モデルであるとはいえ、通話機能を使わず音楽再生のみ楽しむのであればiPhoneでもそのサウンドを聴くことができる。リモコン機能よりも音質優先で考えているユーザーも多いと思うが、AKシリーズなどDAPに直挿ししても違和感なくサウンドを聴くことができたので、まずはこの進化した新生MOMENTUMのサウンドをすぐにでも体感してほしい。
(岩井 喬)
そして一方のMOMENTUM Gのサウンドであるが、HD25系のトーンも感じさせる中高域の煌びやかさと、現代的なベースの豊かさを同居させたような第一世代の音色から、より安定感のある、ゼンハイザーらしい普遍的なサウンドへの回帰を思わせるものへと変化している。
中低域の密度はそのままに、全体的な解像度の向上を図り、キレ良く伸びやかなサウンドを獲得。中高域にかけての艶っぽさを生む倍音の華やかな部分も失われておらず、音像における輪郭表現の助けとなっているようだ。なお、AK Jr単体でMOMENTUM Gを駆動するのは多少荷が重いようなので、こちらに関してはOPPO「HA-2」をアナログ接続して試聴を行った。
レヴァイン指揮/シカゴ交響楽団『惑星』収録曲「木星」(CDリッピング:44.1kHz/16bit・WAV)では管弦楽器のキレ良くエッジの効いたハーモニーが分離良く浮き上がり、弾力良く引き締まったローエンドの表現によって音場はクリアにまとまる。高域にかけての倍音感は強めだが、ディティール表現が細やかで、ハーモニーも高密度で伸びやかだ。
『飛騨高山ヴィルトーゾオーケストラ コンサート2013』収録曲「プロコフィエフ:交響曲第1番 古典交響曲ニ長調 Op.25 第1楽章」(e-onkyo:96kHz/24bit・WAV)においては、低域の響きがすっきりとまとまり、見通し良い空間が展開。管弦楽器の旋律はほぐれ良く整理され、個々のパートの響きがつかみやすい。ハイレゾらしい高解像度でクリアな音場へ粒立ち細やかなハーモニーが伸びやかに広がる。
イ・ソリスティ・ディ・ペルージャ『ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲集「四季」』収録曲「春」(HQM:192kHz/24bit・WAV)でもキメの細やかな弦楽器のプレイニュアンスを味わえるが、流麗な弦の質感とウェットな余韻の清々しさがより際立つ。低域方向への伸びもしっかりと感じるが、制動良くまとめており、折り目正しい凛としたタッチが強くなる。
オスカー・ピーターソン・トリオ『プリーズ・リクエスト』収録曲「ユー・ルック・グッド・トゥ・ミー」(CDリッピング:44.1kHz/16bit・WAV)においては、煌びやかなピアノのアタックと中低域まできちんと伸びるボディの響きが端正にまとめられており、ハーモニクスを涼やかに表現。ウッドベースのハリ良く滑らかな弦の描写と密度の高い胴鳴りの豊かさもバランス良く、アタック&リリースの的確なドラムの描写も相まって、各々のパートが存在感豊かに浮き上がる。
ロック音源のデイヴ・メニケッティ『メニケッティ』収録曲「メッシン・ウィズ・ミスター・ビッグ」(CDリッピング:44.1kHz/16bit・WAV)では、ディストーションギターやドラム、ベースが硬質なタッチで描かれ、アタックのくっきりとしたスピード感溢れるサウンドが展開。ボーカルもヌケ良く明瞭でシンバルワークもクリアで清々しい。キックドラムのリリースの僅かなふくよかさが耳当たりの良さに繋がっているようだ。
女性ボーカル・EDM系のKOTOKO「→unfinished→」(CDリッピング:44.1kHz/16bit・WAV)においては、弾力良いベースと硬質なアタックを見せるキックドラムの音色によってタイトなビートを描き出す。ギターやシンセはソリッドで切れ味鮮やかなエッジを持たせた鳴り方で、高域にかけての倍音はキラキラと浮き上がる。ボーカルのボトムはほんのりと厚いが、口元の輪郭は艶良くクールに描き、音像はシャープに定位。立ち上がりの素早い解像感高いサウンドだ。
Kalafina「ring your bell」(mora:96kHz/24bit・FLAC)ではずっしりと響くベースが落ち着きを生む。分離良く浮かび上がるストリングスのスムーズなハーモニーと、ナチュラルな肉付き感を持つボーカルのウェットな音像が爽やかに展開。高域の艶も滑らかに浮き立ち、耳馴染み良いクリアな音色となる。
MOMENTUM Gはモニター的なサウンドに近づいた印象で、程よく倍音を乗せて耳当たり良いアレンジとしているが、基本はHDシリーズ譲りの音像の芯が厚い実直なサウンドを持っていると言えそうだ。一方のMOMENTUM On-Ear Gは、よりコンパクトかつカジュアルに使いこなすツールとして、サウンドについてもノリの良いトレンドに寄り添うゴージャス系の音色が特徴といえる。
現時点の2色展開という段階では、双方の外観における違いはサイズ感とパッド素材が中心となるが、それ以上に音質についての個性の違いは大きく、両モデルを所有し、気分によって使い分けるのも“粋”ではないか。できればさらなるカラー展開を望みたいところだ。
このMOMENTUM 第二世代モデルは世界的に評価されたモダンで洗練されたデザイン性をブラッシュアップし、時代に即したニーズにただ寄り添うだけでなく、ゼンハイザー・サウンドの本筋とはどこにあるのか、その解に真摯に向き合ってチューニングされた、単なる“Mk-2”の枠に収まらない、老舗ブランドならではの真価が発揮されたプロダクトといえるだろう。
またこの2機種はGALAXY対応モデルであるとはいえ、通話機能を使わず音楽再生のみ楽しむのであればiPhoneでもそのサウンドを聴くことができる。リモコン機能よりも音質優先で考えているユーザーも多いと思うが、AKシリーズなどDAPに直挿ししても違和感なくサウンドを聴くことができたので、まずはこの進化した新生MOMENTUMのサウンドをすぐにでも体感してほしい。
(岩井 喬)