<山本敦のAV進化論 第72回>
【新旧対決】“ウォークマンAシリーズ”はどこが変わった? 機能や音質を比較チェック
【変更点5】はんだの素材変更やFilled VIAの採用など音質改善のための新技術を採用
このあたりはあまり表に現れない中身の部分だが、Aシリーズの音のチューニングに大きく関わる要素として説明しておきたい。
A10シリーズでは、ソニーのハイエンドオーディオ機器にも採用されてきた独自開発の無鉛高音質はんだに、純度99.99%以上の高純度“すず”を使っていた。新しいA20シリーズでは金属結晶の品質をさらに高めることで、各帯域の音のつながりを良くして、自然なバランスに整えている。
また内部の多層構造の厚膜銅箔プリント基板には、上下層の配線を電気的につなぐために設けている「VIA」の部分を銅メッキで穴埋めした「Filled VIA」の技法を採用した。これにより電源が安定化し、配線インインピーダンスが下がる効果が得られるとともに、聴感上では低域をタイトに引き締め、高域を伸びやかに響かせることができるようになるという。それぞれの効果がどのように現れるのか、後ほどリスニングによって検証したいと思う。
【変更点6】カラオケ/語学学習/DPCが非搭載にn
A10に乗っていた機能がA20では無くなっているものもあった。再生中の楽曲からボーカルの帯域を引っ込めてカラオケを楽しむ機能、語学学習に役立つ「クイックリプレイ(3秒戻し)」や「A-B区間リピート」などのトリックプレイ機能がA20では省略されている。
また再生速度を0.5倍から2倍の間で調節する「DPC(デジタル・ピッチ・コントロール)」の機能も見つからなかった。それぞれの用途にウォークマンを使うユーザーが減ってきているということだろうか。
■A10からA20へ〜変わらなかったところ
筆者は前機種のA10は、エントリーユーザー向けのポータブルオーディオプレーヤーとしてとても完成度の高い製品だと思っている。外観の変化が想定以上に少なかったことは、発表当初は少し残念に感じたが、今回A20をハンドリングして、あらためてサクサクと動く操作感や持ちやすさ、軽くて小さいところなどA10の時点で極まっていたのだなと実感。今回は敢えて手を加える必要がなかったのだろうと納得した。
なお、ハイレゾの音源はFLAC/WAV/ALAC/AIFFのファイル形式で、最大192kHz/24bitまでサポートしている。DSD再生はPCM変換も含めて非対応のままだ。DSDのハイレゾ音源については徐々に販売される作品が増えて、巷の関心も高まりつつあるので、Aシリーズとしては次の検討課題かもしれない。
本体のボトムに搭載されているWM-PortからUSB経由でのデジタル出力が可能な点も継続。ソニーの「PHA-1A」などポータブルヘッドホンアンプとの組み合わせても相性の良さを発揮するだろう。
バッテリーライフはA10と同じく、ハイレゾの連続再生時間はFLAC 192kHz/24bitの音源を、ノイズキャンセリング機能をオフにした状態で最大約30時間を実現している。ノイズキャンセリング機能がオンの状態なら約27時間だ。なおBluetoothでLDAC(標準)を選んでFLAC 96kHz/24bitの音源をワイヤレス再生している場合なら約16時間になる。