【特別企画】評論家が音質傾向を語り合う
野村ケンジ×高橋敦がクリプシュ「X20i」を肴にぶっちゃけトーク。2ドライバーで音はどう変わった?
高橋 X10のほうは、フルレンジ1発で最大限の音を引き出すために多少無理をしていたような部分もあったように思います。その無理で生まれる歪み感も、ウォームさなど独特の感触につながっていたのだと思いますが。
野村 そう、真っ向勝負してくれてるんだよね。
高橋 X20はドライバーユニットに無理をさせず、それぞれの帯域をちゃんとクリアに出しているという印象です。ただ、ウーファー側はX10と同じフルレンジユニットを使っているので同じニュアンスも残してある、と。X10も販売を継続しながら上位モデルを出すとなったときに、まったくの延長線上ではなく「別の音だけどやっぱりクリプシュのイヤホンなんだ」という、このやり方は納得できますね。何もかも新しくすることもできたと思うんですけど、X10を残すという判断、考え方もクリプシュらしいなと。
■野村・高橋が選ぶ「X20iで聴くならこの曲!」
− では、組み合わせるプレーヤーはどうでしょうか。
高橋 リモコンマイクが付いているのでiPhoneを前提にしていると思うし、個人的にもiPhoneで使ってみたいですね。もちろん専用のオーディオプレーヤーやヘッドホンアンプを使えば、もっといい音になるのでしょうけど。
野村 iPhoneに直接つないでも全然イケますよ。iPhoneで出せる最高の音をX20iが引き出してくれます。「これ以上を望むならプレーヤーを変えてください。変えればもっといい音を出せるよ。僕の実力はこんなもんじゃないよ」という余裕がある(笑)。
− それでは最後に、「X20iで聴くならこの曲!」といったテーマならどんな楽曲を選びますか?
野村 僕は先ほども挙げたFAKiEの「(They Long To Be)Close to You」ですね。凄く合ってますよ。ピュアな音なのでそれが相性良いですね。
高橋 僕も先ほど話に出たRobert Glasper Experimentの「I Stand Alone」ですね。野村さんが挙げたFAKiEもそうなんですけど、アタックが凄く早い曲なんですよ。フルレンジ一発だとそれに対応しきれない部分も出てくるのですが、今回、ドライバーが役割分担したことで、どの帯域にも余裕が生まれているんです。Robert Glasper Experimentだと、その部分は特に低域で発揮されて、FAKiEだと中高域でそれが発揮されてます。10kHzより上など、高域はとても負荷がかかるので、そこをトゥイーターに任せられると随分楽になるんだな、と。KG926がひとりで全力なのがX10、パートナーを得て余裕を見せるのがX20iという感じでしょうか。
野村 …ところで、我々の対談ということでアニソン関連も挙げておきましょうか。川田まみさんの「Borderland」なんかも合いますね。
高橋 ちょっと古い言葉で言うとデジロック的な感じとか。
野村 ボーカルもちょっと加工しているような曲だよね。
高橋 デジタルではない人力なアーティストで言うと、凛として時雨以降のエッジの鋭さというか。突き刺すように歌うタイプのボーカルだったら絶対にX20iのほうが合いますね。
野村 凛として時雨はまだハイレゾでのリリースがないのが残念ですね(※編集部駐:ボーカル&ギター TKのソロ楽曲が1曲だけハイレゾ配信されている)。
高橋 ハイレゾでのリリースはされていませんが、Perfumeも合いそうですよね。例えば「Spending all my time」では、シンセのクリアな音色と、オーバーロードさせたエッジを効かせた音が両方入っているのですが、クリアさもエッジの感じもX20iならイケますよ。
− なるほど。とても参考になりました。本日はどうもありがとうございました!