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【レビュー】SHURE初ポタアン「SHA900」を聴く。SE846との組み合わせは“無敵のタッグ”

公開日 2015/12/15 11:30 小原由夫
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私の手元に届いたSE846の試聴機は、高貴さも感じさせるエレガントなブロンズ。コンパクトな曲面体でまとめられていることもあって、宝飾品のような品格も感じ取れる。女性も抵抗感なく使え、似合いそうなデザインだ。

色によって仕上げが異なっている。ブルーはハーフマットの落ち着いた仕上げ。ブラックはグロス仕上げだがロゴも黒のためシックな印象。ブロンズは耳元でキラリと煌めく上質なカラーだ

SE846とSHA900の組み合わせで一聴して気づくのは、ローエンドの強靭さだ。低域を過剰に盛っているということではもちろんなく、必要な時に必要なだけローエンドがトルクフルに吹き上がる。つまり、ソースやその時のボリュームに応じて、低域の押し出しがグイっと力強くなるような感じである。


それでいて低域の解像力は、仰け反るほどに素晴らしい。厚みがあり、情報量もしっかり出るというのは、意外に相反する要素であって、それをポータブルアンプで感じさせてくれるところがSHA900の凄いところ、セールスポイントと言える。

高域は、シュアのBAドライバーならではの切れの良さと輝かしさといった特質が、SHA900によってさらに高められている。開発過程では、当然のことながらSEシリーズのイヤホンで音質チェック/チューニングも実施されたものと思うが、双方がパフォーマンスを高め合うような感じを受けた。


広い音場と立体感ある音楽描写を聴かせる

今回の試聴はAstell&Kern AK120IIと組み合わせ、ライン接続で実施した。そこで最も印象に残ったのは、パット・メセニー・ユニティ・グループの「KIN」だ。96kHz/24bit/FLAC音声のそれは、メセニーならではの穏やかで牧歌的なメロディーの広がりと、オーケストリオンとバンドという機械+人力による複雑かつ重厚なアンサンブルを、とても立体的かつ階層感豊かに聴かせてくれた。ギターやサックス、キーボード等がユニゾンにて次第にクレッシェンドしていく様は、まるで頭の中に小宇宙が形成されていくような不思議な感覚だった。

すべてのEQをバイパスしたピュアなモードに切り替えると、視界はさらに広く、深くなる。デンマークの女性ジャズボーカリスト、シーネ・エイの「月光のいたずら」(96kHz/24bit/FLAC)でEQの「VOCAL BOOST」を働かせてみた。過剰な効き目で訴えるのでなく、まさにジェントルな効き具合で、そこはかとなくヴォーカルが張り出す感じがたいへん好ましい。もっとメリハリの効いた効果を望むならば、4バンドのパラメトリックEQを使えばいいことで、その調整もディスプレイがあるので非常にわかりやすい形で提供される。

パラメトリックイコライザーは5種類のプリセットを用意。カスタムEQも保存できる

こうした一連の機能設定は、電源スイッチとボリュームノブ(ロータリー・エンコーダー)のアップ/ダウン/プッシュの組み合わせという形を採っている。最初は戸惑うかもしれないが、慣れてしまえばむしろ簡便さを感じることだろう。何より、本体のボタン/スイッチ類を最小限に留めたエルゴノミクスという上でも、実に好ましいインターフェースと思う。


SHA900とSE846のコンビネーションは“無敵のタッグ"

続いて、Lightningケーブルを介してiPad miniと接続した。UNAMASレーベルからリリースされている深町 純のピアノソロ「祈祷の詩」(96kHz/24bit/FLAC)を聴く。打鍵の強弱を鮮明に浮かび上がらせると共に、その余韻のアトモスフィアが消えていく様が実に美しい。音場の見通しが俄然クリアーで、メロディーは立体的に浮かび上がる。心に染みる演奏とは、まさしくこのことだ。

「ドナルド・フェイゲン/ミス・マリーン」(88.2kHz/24bit/FLAC)では、ビートをしっかりとグリップし、リズミカルな楽曲を濃密に再現した。コーラスの分離も良好で、凝ったアレンジが存分に堪能できる。この辺りはSE846の実力の高さ、マルチドライバーゆえの分解能の高さも効いていそうだ。

「チャイコフスキー:交響曲第6番<悲愴>」(96kHz/24bit/FLAC)の第3楽章では、次第にクレッシェンドしていきながら高らかに突き上げる弦と管のハーモニーをがっちりと再現。これだけの重厚感が出せるイヤホンとポータブルアンプの組み合わせはそうそうないだろう。

私は今回の試聴で、SHA900とSE846のコンビネーションは“無敵のタッグ"という印象を深めた次第である。


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