海上忍のラズパイ・オーディオ通信(18)
たったの5ドル!安くて小さい「Raspberry Pi Zero」をオーディオ機器に仕上げる(前編)
■Raspberry Pi Zeroの難所はココだ
前項ではプラス材料ばかり語ってしまったが、実はRaspberry Pi Zeroにはマイナス材料が少なくない。正直にいえば、ノーマルモデルのほうが導入は容易でUSB機器も扱いやすく、オーディオ用途には適している。安さには理由があるのだ。
最大の難所は「ハンダ付け」。Raspberry Pi ZeroにはGPIOポート用の孔はあるが、GPIOピンはオプション扱いなのだ。そのため別売のGPIOピンをあわせて入手し、基板にハンダ付けしないことには、GPIOポートに装着するタイプのDACカードを利用できない。しかも孔はスルーホールのため、ハンダ付けにも多少のコツが必要となる。この1点だけで躊躇してしまう向きも少なくないはずだ。
もう1つネックとなるのが、USBポートの少なさ。基板を見ると、micro-Bポートが2基見えるが、そのうち1基は電源専用のためUSB機器の接続には利用できない。複数のUSB機器を接続する場合には、USBハブを用意するしかなく、USB AポートのサイズからしてもUSBハブのほうがRaspberry Pi Zeroより大きく(長く)なりがちで、そうなればせっかくのコンパクトさもスポイルされてしまう。だったら最初から4基あるノーマルモデルのほうが……と考えてしまうのも無理からぬ話だろう。
Raspberry Pi Zeroに正式対応したオーディオ指向Linuxディストリビューションが見当たらない点も、懸念材料といえるだろう。micro-Bポート経由でPCとつなぐとUSB-Ethernetデバイスとして認識され、PC経由でネットワークに接続できる「OTGスレーブモード」は、Raspberry Pi財団公式のディストリビューション「Raspbian」が5月に対応したばかりで、Raspbianをベースに開発を進める他の(オーディオ指向の)ディストリビューションでの採用はこれからのこと。VolumioやRuneAudioも、あらかじめ(apt-getで)カーネルなどを最新版にアップデートしておけばRaspberry Pi Zeroで動作するが、ユーザ層を考えればイメージファイルをmicroSDに書き込むだけのほうが望ましい。
とはいえ、清涼菓子の容器ほどのサイズ感でI2Sの鮮烈な出音を愉しめるという誘惑には抗いがたい。次回は、PCM 5102A搭載のDACボード「PHAT DAC」を装着し、LINE OUTで音を出すまでの手順を紹介する予定だ。