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<IFA>有機EL/液晶/4Kプロジェクター…次世代画質を競う各社製品を山之内正がレビュー
<4Kプロジェクター>
■HDR対応がさらに強化されたソニー
ソニーのブースでは4Kプロジェクターの新製品「VPL-VW550ES」が公開され、特設のシアタールームで視聴することができた。欧州価格が9,999ユーロなので、国内モデルは100万円前後と思われるが、いずれにしてもVW515の後継に相当するSXRD 4Kプロジェクターである。欧州ではハイエンドクラスの4Kプロジェクターでもかなりの割合でリビングシアターとして導入される例が多く、本機もブラックに加えてプレミアムホワイトが用意される。
VW515からの進化は主にHDR関連に絞られ、スペック上はダイナミックコントラストが35万対1に向上していることが目を引くが、画質関連の機能として新設された「HDRコントラスト」が重要な意味を持つ。プロジェクターでHDR映像を投影すると、ダイナミックレンジを確保するために平均輝度が下がり、全体に暗い映像に感じてしまうことがある。HDRコントラストはカットオフレベルを変えることで平均輝度を上げ、明るさとコントラストを両立させることを狙ったものだ。
実際に『ゴーストバスターズ』の予告映像などを見ると、同機能の効果は一目瞭然で、HDRならではの立体的な描写と明るさが両立し、自然なコントラスト感が伝わってくる。カットオフレベルを変えるとはいえ、ガンマカーブ自体を動かすわけではないので、映像のトーンが変わってしまうことはなく、撮影監督の意図を損なう心配はない。
■試作機段階だが高いポテンシャルを感じるJVC
JVCは同社初のネイティブ4Kプロジェクター「DLA-Z1」を出展し、大きな話題を集めた。本機に照準を合わせて新たに開発したD-ILA素子とレーザー光源を組み合わせ、まさにハイエンドプロジェクターにふさわしい風格をそなえている。
レンズと光源をインラインに配置し、背面に巨大なヒートシンクを内蔵していることもあり、本体は奥行き72cmと相当に大きく、重さも40kgに近い。放熱機構は背面吸気&前面排気となり、天吊金具は従来と互換性があるものの、設置のハードルは高そうだ。かつての3管式プロジェクターほどではないが、天吊の場合は本格的な施工が不可欠だろう。
レンズは100mmと大口径。異常分散ガラスを含む16群18枚構成のレンズも本機のための専用設計だ。なお、前後長を少しでも抑えるためにレンズのシャッター機構は内蔵していない。
今回のデモのために製作されたHDRコンテンツでは、透明感の高さと見通しの良さが際立ち、e-shiftによる既存モデルの4K映像とは一線を画す精細感を堪能することができた。ピーク輝度3,000ルーメンの余裕を生かした映像は、シネスコ135インチでの投影ではパワーが有り余っている印象で、映像の隅々まで力強いエネルギーが漲っている。
試作段階のため、JVC独自の精細感向上技術「MPC」がまだ実装されていなかったが、『ルーシー』の人物クローズアップなど、UHD BDの映像から息を呑むほどの精細感と立体的なテクスチャーを引き出していることが印象的だった。まだ試作機レベルとはいえ、ポテンシャルの高さは目を見張るものがある。