HOME > レビュー > マランツ「PM-10」を聴く。800 D3も鳴らし切る、一体型の枠を超えた新旗艦アンプ

高性能スイッチングアンプ採用で実現したセパレートアンプの一体化

マランツ「PM-10」を聴く。800 D3も鳴らし切る、一体型の枠を超えた新旗艦アンプ

公開日 2017/02/23 10:23 角田郁雄
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「SC-7S2」を進化させた、フルバランス/フルディスクリートのプリアンプ部

まずプリアンプ部について紹介する。PM-10は入力から出力まで全段バランス構成としており、プリ部も当然フルバランス/フルディスクリート仕様だ。このプリ部はインテグレーテッドアンプの1部分でありながら、単体プリアンプである「SC-7S2」を進化させたものである。

プリアンプ基板は3層構成。最上段はXLRバランスライン入力基板で、2段目はRCAアンバランスライン入力ボードである。最下段となる3段目は、厳重なシールドが施されたフォノイコライザー回路で、この回路の手前にはプリアンプ部の電源整流回路が配置されている。

PM-10のプリアンプ基板。写真左が最上段のXLRバランス入力基板、右側がRCAアンバランス入力基板となる

プリアンプの各増福素子はマランツのお家芸、ディスクリート構成の高速増福モジュール HDAM-SA3を用いている。また、フォノイコライザーにも同じくHDAM-SA3を使用。カスタムメイドの高音質コンデンサーや抵抗がふんだんに用いられ、なおかつ精密感あふれる美しい基板。私はこういったものを見せられると、本当に感激してしまうのだ。

ボリュームには、高精度電子ボリューム素子「MAS6116」をL/Rに1個ずつ使用する。プリアンプで増福されたアナログ信号は、モノラル構成かつBTL構成のスイッチングアンプでスピーカーを駆動できるレベルに増幅される。

Hypex社製のスイッチングアンプモジュールで駆動力とスペースファクターを両立

PM-10に用いられたスイッチングアンプ・モジュールは、マランツと関係が深かった元フィリップスのエンジニアが手がけるオランダのHypex社のもの。その最上位クラスである「Ncore」だ。このスイッチングアンプ・モジュールの特徴は、バランス入力のみを備えていること、そして一般的なパワーアンプの最終出力段の役割のみを果たしていることだ。その前段のバランス構成のアナログ回路で信号があるレベルまで増幅された後に、スイッチングアンプへバランス入力が行われることになる。

Hypexのスイッチング・アンプモジュール「Ncore」

スイッチングアンプとは、いわばDSDのような高密度なパルス波を生成し、それを増福する方式だが、このHypexのモジュールにおいてはほぼ全てがアナログ増福処理されている。クラスDアンプといっても様々な方式があるが、本機はデジタル入力のみを備えてDSPによって演算されるようなタイプとはまったく異なる。また、モジュール内にローパスフィルターおよび保護回路も内蔵しているので、スピーカー端子の直前に保護リレーを配置することも不要となる。このNcoreモジュールが1chあたりホット/コールドで2基、BTLで使用されている(両チャンネルで合計4基となる)。

写真のようにNcoreがヒートシンクと組み合わされて、合計4基配置。BTL駆動を行う

最大出力は400W/4Ω。驚くべきは、スピーカーに対する駆動力の指標となるダンピングファクターが500という値を実現していることだ。一般的なクラスDアンプではまず達成が難しい性能値であり、世界の大型フロア型スピーカーをドライブできる性能を備えていると言える。

次ページB&W「800 D3」を鳴らし切る駆動力を目の当たりにした

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