HOME > レビュー > 【第183回】JH Audioのイヤホン新シリーズ「Performance Series」登場!3機種一斉レビュー

[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第183回】JH Audioのイヤホン新シリーズ「Performance Series」登場!3機種一斉レビュー

公開日 2017/03/24 10:30 高橋 敦
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

それでは気になるサウンドをチェック!…の前に“低音”を調整

さて、サウンドチェックをする前に、説明しておくべきは前述の「Variable Bass Output Adjustable」の調整だ。低音の出し方を調整するこれについては今回、全モデル共通のポジションに揃えるのではなく、各モデルごとにベストと思えるポジションに合わせた。

たとえ話だが、現代のボクサーはグローブを着けた打撃に特化しており、むしろグローブを外さず着けている方がその打撃は相手の脳を揺らす効果的なパンチになりやすいという説がある。対して古い空手の突きの技術はもちろん裸拳を前提としており、その拳が最大の威力を発揮するのはグローブなどしない裸拳での直接打撃時だ。とすれば、双方が共に最大の力を発揮できる公平な状況とは「共にグローブ装着」でも「共に裸拳」でもなく、「ボクサーはグローブ着用、空手家は裸拳」なのではないだろうか。

…というような考え方から、今回は各モデルごとにあれこれと曲を聴きながらアジャストを行なった結果として「僕にとってマックス好印象なセッティング!」に全モデルの条件を揃えた。

各モデルの左右のセッティングも、写真で見ても少しズレていることがお分かりになるだろう。これは単に「実際に音がちゃんとセンターに定位して聴こえるように調整したらこうなった」というだけだ。

今回のRoxnはこのセッティング。ROXANNEはやっぱり低域出していきたくなる感強い

13V2はこんなセッティング。左右のずらしもポイント

この機構のこの部分には半固定抵抗器、トリムポットが使われている。そして半固定抵抗のおおよその製品では、抵抗値±30%ほどの誤差まではパーツのバラつきの許容値だ。この機構の回路に使われている半固定抵抗も左右で数十%のズレはありえる。高価で高精度な製品を使う、実測選別して左右の値を揃えるなどの対策も可能だが、それでも誤差を完全に押さえ込むのは現実的ではない。

であるので、そこの誤差はユーザー側で調整するというのが現実的だろう。それを意図してあるのかはわからないが、JHのこのユニットは都合の良いことに左右別々に調整する形だ。

実際の調整としては、普段からのリファレンス曲においてベースがセンター定位で、ミックスされていることが確実な曲のベースを聴き、その定位に違和感がなければ問題ないだろう。

その上でよりセッティングを詰めたい場合は、スマホのオシレーターアプリなどで任意の周波数のサイン波(楽器の音とは違い究極的に単純な波形・音なのでこういった確認には便利)を出力し、それを聴いて微調整をすると良い。100〜200Hzが分かりやすいだろう。今回はそのような手順で調整した。

そのついでに、このVariable Bass Output Adjustableの効果が及ぶ周波数も確認。サイン波を鳴らしながらダイヤルを最大から最小まで動かしてみたところ、上は4kHzあたりまでは音が明確に変化することを感じられた。しかし効果が最も大きく現れる帯域としては200Hzから400Hzあたり。影響する帯域は中高域側までなだらかに広がってはいるが、「低音の調整機能」という呼び方、認識、使い方で差し支えないだろう。

ROXANNEは信号ではなくステージを再現する!

それでは今度こそ!サウンドチェックの印象へ!まずは「ROXANNE」から。僕はこれまでの歴代ROXANNEを入念に聴き込んできたというほどではなく、そこの比較に確信は持てない。そのはずなのだが、前述のようにこちらのモデルは僕の耳へのフィットがこれまでと比べ格段に良いことが大きいだろうが、それでも印象としては「最新のROXANNEが最高のROXANNE!」と思わされてしまうほどのジャンプアップを感じた。Roxnでしか味わえない迫力、あの低さに濃く広がる空気感などは確実に継承しつつ、中高域側の感触もより自然で心地良いものになっている。

そしてこれまた変わらず、イヤホン自らの個性で曲を演出していくタイプなので、どんな曲を聴いてもその曲に合う合わないということはあまりない。このイヤホンの個性とユーザーの好みが合ってさえいれば、どんな曲もこのイヤホンの色で楽しめてしまう。

逆に「イヤーモニターなのにフラットではない音作りはおかしいのではないか?」と感じるかもしれない。たしかにRoxnの音作りは他の多くのイヤーモニターとは異なる。しかし考え方によってはこの音作りも、イヤーモニターとして納得できるものだ。

次ページステージそのものの空気感までを再現するような音作り

前へ 1 2 3 4 5 6 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE