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【特別企画】リクロックで音はどう変わる?

クロック入力が無い機器やUSBオーディオも音質向上 − MUTEC「MC-3+USB」でリクロックを試す

公開日 2017/03/31 10:00 岩井 喬
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クロックジェネレーターとして192kHzまでのワードクロック出力(2系統ペアの4系統出力)に加え、256倍や512倍の乗算処理によるクロックレートにも対応し、22.5792MHzや24.576MHz出力も可能だ。

コンシューマーオーディオ向けの機能性として考えると、前述したUSB入力や光・同軸S/PDIF入力(同軸はRCA→BNC変換が必要)のリクロックが最も有効であり、1Gクロックテクノロジーを用いてジッターを排除した信号をS/PDIFの光・同軸出力、及びAES/EBU出力から取り出せる。

MC-3+USBを用いたシステムのイメージ

特にUSBオーディオ信号のマスタークロックジェネレーターを使ったリクロックは他にはない機能性であり、USB入力を持たないDACとの組み合わせのみならず、同軸入力では192kHz/24bit対応だが、USB入力は96kHz/24bitまでといった前世代のUSB-DACと組み合わせることで圧倒的な音質改善が見込めるだろう。

USBオーディオをリクロックすると音はどう変化するのか

今回の試聴ではMC-3+USBと価格が近いミドルレンジのUSB-DACから、人気の高いOPPO「Sonica DAC」、そしてTEAC「UD-503」との組み合わせによるサウンドを確認してみた。

人気のUSB-DACと組み合わせて試聴

まずはSonica DACである。USB入力は768kHz/32bit・PCM&22.6MHz・DSDに対応するという現在最高水準のスペックと、ESS製の最新フラッグシップDACチップ「ES9038PRO」を搭載しつつもリーズナブルな価格に落とし込んだ、同社の戦略的ネットワークプレーヤー内蔵DACだ。MC-3+USBとは同軸S/PDIFで結び、単体でのUSB-DACとの音質を比べてみた。

OPPO「Sonica DAC」

MC-3+USBでの設定はMENUボタンで“MODE”に切り替え、MC-3+USB内部クロックと入力信号のリクロックを実施する“INTERN”+“RE-CLK”2つのLEDが点灯するようSELECTボタンで切り替える。続いてどの基準信号に同期させるか“REFERENCE”項目をMENUボタンで選び、“USB-DSD/DoP”を示す中央2つのLEDが点灯するように、SELECTボタンで切り替えれば良い。

前面ディスプレイのLED表示により現在の設定状況が示される

2016年8月のアップデートで、従来PCM系とDSD系の切り替えが手動だったものが自動化され、再生に特化したコンシューマーユースでの利便性が向上した。DSD再生時はMUTEC独自のアルゴリズムでPCM変換を行うが、PCM系音源に比べてかなり音量が小さめになる。この点の詳細はアルゴリズムの内容とともに公にされていないが、1Gクロックテクノロジーによって向上したS/Nを生かすよう、ダイナミクスを優先したものと思われる。

またPCMからDSDなどのように、クロックの異なる音源が続いて再生される時はMC-3+USBでミュートがかかるが、突発的な大音量の発生を考慮しかなり長めにミュートされる設定となっているため、曲の冒頭が途切れることもある。この点は今後改善してほしいところだが、再生する側もあらかじめプレイリストで同系列フォーマットの音源をまとめるなどして工夫したい。

Sonica DAC単体ではES9038PROの持つ芯の太い安定的な音像表現と、リッチな空間性を両立。オーケストラの旋律は爽やかに浮き上がり、中低域の響きは密度高くふくよか。11.2MHz音源もS/N良く涼やかな音質でボーカルの肉付きも安定感ある太さで描かれる。MC-3+USBとの接続では全帯域で音像が引き締まり、シンバル、ピアノなど、高域系の響きもヌケ良く滑らかに展開。S/Nはより高まる。

低域方向のニュアンスも細やかで、キックドラムやベースとの描き分けも明確だ。管弦楽器の旋律は爽やかな響きとなり、一音ずつの粒立ちを丁寧に、そして分離良く描き出す。ホールトーンも涼やかで、情報量と制動力の高さが際立つ。空間も広く、鮮度の良い生々しいサウンドである。

DSDのPCM変換音源も音像の厚みを持たせながら分離良く軽やかな音場を再現。空間性もシームレスでDSDらしさをしっかりと感じさせる。締まり良くキレのある低域が生む躍動感も見事だ。音像の輪郭もくっきりとして音場のクリアさをより際立たせている。付帯感のないストレートな音色傾向だ。

続いてUD-503であるが、今回はMC-3+USBからの同軸S/PDIF信号を受ける形でのみチェックを行った。UD-503単体の音質は率直で適度な音像の厚みを持たせたバランス志向のサウンド傾向だ。

TEAC「UD-503」

MC-3+USBと接続すると落ち着いた音調となり、フォーカスの良いニュートラルな傾向がより高まってきた。音像の厚みと引き締め効果もバランス良く両立しており、質感はややドライながらも、残響や余韻感も素直に表現。ボーカルも口元のニュアンスをリアルにトレースし、彫りの深いリアルなタッチで描く。

リズム隊もタイトにまとめ、ウッドベースも弾力良くナチュラルに響かせる。オーケストラの余韻もスムーズに収束し、旋律の立ち上がりもキレ良く克明に描き出す。弦楽器はハリ良く適度な艶を持ち、胴鳴りの響きも丁寧かつ弾力良く表現。朗らかで有機的な描写を実感できた。

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