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【特別企画】進化のポイントを探る

もはやポータブルの領域を超えた? CHORD「Hugo 2」のサウンドを初代と比較試聴

公開日 2017/04/21 12:02 山本 敦
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まずはヘッドホンと組合せ。より繊細で質感滑らかなサウンドに

Hugo 2の試聴は音元出版で行った。ヘッドホンにはAstell&Kernの「AK T1p」を用意して、MacBook AirとAudirvana Plus 3との組み合わせをUSBケーブルでつないだ。初代Hugoとも聴き比べている。試聴の楽曲にはMISIAのアルバム「星空のライヴ SONG BOOK HISTORY OF HOSHIZORA LIVE」から『Everything』を聴いた。

Astell&Kernの「AK T1p」と組み合わせて試聴

観客のざわめきに吸い込まれるような解像感と音の密度。エレキピアノのふくよかなトーンが浮かび上がる。ボーカルの声はクールな透明感が強く反映されるところがHugo 2の特徴。比べて聴くと初代Hugoのボーカルはより輪郭線がはっきりとしていて、ストレートにぶつかってくる。Hugo 2の輪郭線はより繊細で質感もなめらか。ビブラートのゆらぎが視覚的にも伝わってくるように感じられるほど情報量が豊かだ。

低音は打ち込みが鋭く、奥行き方向への見晴らしがまた一段と上がっている。ベースラインの立ち上がりが鋭く筋肉質。バスドラムのタイトなキックの音が素速く、深く沈み込む。ハーモニーが軽やかにほぐれてリズムの粒立ちもいい。ただ、初代Hugoのウォームで分厚いアタック感にもやはり魅力がある。

4種類のデジタルフィルターは、「白=1次WTA+2次WTA」の状態がHugo 2のリファレンスであるようだ。俊敏さとスピード感、ボディの肉付きのよさとバランスが整っている。入念に音づくりを練り上げた印象だ。基本的にはこのフィルターを基準に他のリスニングシーンをアレンジしていく使い方がベストだと思う。

フィルターを全部入りのグリーンに切り替えると、声の稜線がより鮮明に浮かび上がり柔らかな余韻に包まれる。音像も一段と間近に迫ってくるようだ。オレンジのフィルターに切り替えると中低域の厚みとしなやかさが増してきた。最後に赤色のフィルターに切り替えると、リズムの鮮鋭感にインパクトの力強さも乗ってくる。

Hugo 2ではヘッドホン出力が強化されたことによって、初代Hugoに比べて音の歪みもより低いレベルに抑えられている。また、ハイインピーダンスのヘッドホンも軽々とドライブできる余力も備えている。ゼンハイザーの「HD800」(300Ω)をつないで、同じMISIAの楽曲を聴いてみた。十分な音量を取れることは当然として、ボリュームをそこまで上げなくても、繊細なニュアンスの変化にフォーカスを当てつつ、同時に音楽の芯に宿るエネルギーをぐいぐいと引き出してくる。雑味のないクリアな高域が味わえるのもこの組み合わせの醍醐味。しなやかなボーカルの艶を自然な臨場感とともに描き切る。

Hugo 2にゼンハイザー「HD800」を組み合わせたところ

初代Hugoでは一部、高能率のカスタムIEMなどと組み合わせた場合における残留ノイズの存在を指摘する声もあったようだ。CHORDではこうしたユーザーの声に耳を傾けて、アナログアンプ回路の設計を見直して改善を図った。その成果はMojoやDAVEなどのコンポーネントを経てHugo 2にも投入されている。感度の高いインイヤーモニターで新・旧Hugoの性能を比べてみると、その成果はなおよくわかった。

スピーカー再生で改めて見せつけられた、Hugo 2のポテンシャル

最後に音元出版試聴室のリファレンスシステムをHugo 2で鳴らしてみることにした。楽曲は川本真琴のアルバム「ふとしたことです」から『1/2』を聴いた。

Hugo 2のサウンドをスピーカーで聴くと、きめの細かさと空間再現性が圧倒的に高まっていることがさらに明らかに見えてくる。ボーカルの声に上品さと成熟した色香を感させる。バンドの楽器の音との分離感も高まり、ボーカルの音像定位は一歩下がったようなイメージが浮かんでくる。温かく心地よいサウンドにゆっくりと包まれながら、楽曲の歌詞が2番に到達したころあたりで瞬時に熱気がピークに達した。

Macbook Airをソースに音元出版のリファレンスシステムで試聴

対する初代Hugoのサウンドは、若葉のような初々しさのあるボーカルが魅力的である。歌い手や楽器の演奏者との距離感がより近い印象で、ボーカルの吐息に触れるような密着感も伝わる。しかし、Hugo 2のサウンドと比べてしまうと、解像感には明かな差があり、その音場も平板にも感じられる。

ビビッドな色の絵の具をキャンパスにたたきつけるようなダイナミックな表情を持っているのが初代Hugoなら、広いキャンパスをいっぱいに使って、緻密なデッサンを描くのがHugo 2のサウンドと言えるだろう。

Hugo 2が備える音は、もはやポータブルかどうかという領域で語るものではなくなっている。初代Hugoの時点でこうした評価はすでに確固たるものとしていたが、Hugo 2ではそのサウンドをさらに先へと進化させた。Hugo 2には旗艦DAC「DAVE」で得た成果を投入したという言葉は、音を聴けば納得できる。DAVEのサウンドに惹かれつつも、価格的に手が届かないいう方がいるならば、一度Hugo 2の音を確かめてみるのもいいだろう。



初代Hugoの登場は、ポータブルオーディオのポテンシャルを従来のオーディオファンにまで見せつけた。そしてHugo 2は、その到達点をさらに先まで易々と押し進めてしまった。ヘッドホン再生はもちろん、USB-DACとしても、Hugo 2の再生能力は突出している。オーディオ史に名を刻むであろう「新しいHugo」が誕生した喜びを、多くのファンと分かち合いたい。

(山本 敦)


特別企画 協力:アユート

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