“特別な存在” サージェントの魅力も解説
『サージェント・ペパーズ』50周年記念盤は何がどう変わったのか? ハイレゾやBDなど全曲徹底解説
(8)「ウィズイン・ユー・ウィズアウト・ユー」
旧盤はタブラが左、シタールが左から。西洋楽器のヴァイオリンとチェロはセンターから右、ジョージのヴォーカルはセンター。
新盤は、タブラ左は変わらず。左から右へなまめかしく広がるシタール。ジョージのヴォーカルがセンターにくっきり浮かび上がって広がる。密度があり生動感を帯びた。帯域も改善され西洋楽器がセンターへ集約。
(9)「ホエン・アイム・シックスティー・フォー」
ポールのヴォーカルは左から。コーラスは右。ジョージ・マーティンの吹くクラリネットはセンターやや右。リズム楽器と控えめなギターはセンター、オブリガードの鐘は左から。
新盤は、ヴォーカルがセンターへ。ブラシワーク左。ドラムとベースはセンターから。コーラスもセンター。クラリネットはやはり右。ただし最後にヴォーカルとセンターで重なる。鐘は左。
(10)「ラブリー・リタ」
旧盤はギターとピアノのイントロが左。ドラムスも左から。コーラスはセンターから水平に広がる。ベースもセンター。コーラスは右。中間部ピアノソロやや右だが終結部でピアノは左へ戻る。
新盤は、ベース、ドラムス共センターへ。イントロのピアノは右。シンバルはやや左。コーラスと中間部のピアノは右。楽器定位はそれほど変わらないが、ノイズシェーピングされて鮮度が生まれた。
(11)「グッド・モーニング・グッド・モーニング」
旧盤のイントロのコケコッコー、はセンター。続くブラスは右から。ドラムスとベースのリズム隊は左。ジョンのヴォーカルはセンター、コーラス間のポールのギターソロはセンター。つまりブラスとドラムスが掛け合いする感じ。ラストの各種動物の鳴き声は徐々に右から左へバランス移動。
一方、新盤は大幅にセンターへエネルギーを集めたモノ的バランス。ブラスも左右均等に鳴り響く。ドラムスもセンターだがスネアのドン、が左からオブリガード的に入る。
(12)「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド(リプライズ)」
旧盤のポールのカウントは左、コーラスはセンター、マラカス?は左、ドラムスの打撃はセンターから。
新盤は、音がセンターへ集中。ギターのオブリガードは左から。音場がクリーンになり、立体感が進展。
(13)「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」
旧盤はジョンのヴォーカルが右から出て徐々にセンター定位する。ギターのカッティングが左、オケはセンターから鳴る。ポールのパートに変わるとヴォーカルは右、ピアノは左。アーアーヴォーカルは右から左へ。セカンドコーラスのジョンのヴォーカルは左から出て徐々にセンターへ。ラストのオケは左右均等にクレッシェンドしデクレッシェンドする。最後の話し声は右から左へ循環する。
新盤は、イントロのギター、ピアノは左。バランスを取るようにドラムスは右から。ヴォーカルとベースはセンター。ステレオの分離を強調したバランスだ。目覚まし時計は左から。ラストのジャーンの音圧と帯域、残響効果がめざましい。話し声は左から右へさらに左へ循環する。
オリジナルのステレオミックスは、ポールの歌と彼が弾いているはずのベースの位置が一致しなかったり、ドラムスのシンバルとスネアが左右から別々に聴こえたり、ステレオ効果を意識した結果、不自然極まる音場だったのはつとに知られる通り。
今回は『サージェント…』のスタジオワークが生んだ虚構的音楽世界を活かしつつ、ロックバンドとして最盛期にあったザ・ビートルズの気迫溢れるバンドアンサンブルを尊重している。帯域の拡張はめざましく、別記自宅システムで聴く新盤は地響きのようなすさまじい轟音を堪能できる。