<山本敦のAV進化論 第133回>
ソニー史上最強のAVスマホ、「Xperia XZ Premium」の4K/HDR映像・ハイレゾ再生を試す
スピーカーの再生音をXperia XZと比較してみた。Xperia XZ Premiumの方が中低域の量感が増していて力強い。効果音はますます広がりを増している。エンクロージャーの容積が大きくなっていることが奏功している部分なのだろう。
ただ、現行モデルのXperia XZの方がカチッとして引き締まった音を出せる印象もある。重低音のインパクトを叩きつけるような強さや、役者のセリフがこもらずストレートに伝わってくるような明快さはXperia XZの持ち味とあらためて実感した。機会があれば店頭で音質を比較してみるといいだろう。
ワイヤレス再生はハイレゾ相当の音質で楽しめるLDACにも対応したほか、「Xperia Z4」から搭載がはじまったイヤホン自動最適化により、特にスタンダード価格帯のイヤホンをつないで音を聴くときにベストパフォーマンスが期待できる。
動画再生は映像も音も最高のクオリティを追求したXperiaの最上位モデルならではといえる、クオリティへのこだわりを感じる機能だ。本体のカラバリは好みで選べばよいのだが、4K/HDR映像にのめり込むなら暗く落ち着いたベゼルカラーの「ディープシーブラック」が断然オススメだ。
■Xpeira XZよりも強化されたイヤホン再生を聴いてみる
ヘッドホンによる音楽再生は、ソニーのハイレゾ対応ヘッドホン「MDR-1000X」を用意して、現行モデルのXperia XZと交互に聴き比べた。
音楽再生に関わるところで、Xperia XZ Premiumでは細かな使い勝手が向上している。Xperia Z4の頃から採用が始まったSIMとSDカードの一体型スロットが廃止され、ふたたび別々のスロットを持つようになった。
SIMカードスロットと一体になっていると、SDカードを出し入れするたびに本体の再起動が必要になって煩わしい。そのうえSIMカードにスクラッチ傷が付いてしまうので、何度も繰り返しているとSIMカードが読み込めなくなることもある。スロットが別々になれば、故障を気にせず安心してSDカードの出し入れができるので大歓迎だ。
本題に戻ってサウンドのインプレッション報告に進もう。最も印象的だったのは、Xperia XZ Premiumの方が、明らかに音の見通しが良くなっていたことだ。例えばボーカルの輪郭が切れ味を増していて、楽器の音は立ち上がりが鋭く俊敏だ。
MISIAのライブアルバム『星空のライヴ II Acoustic Live in Okinawa』の「Everything」では、現行モデルのXperia XZとの差が鮮明に現れた。会場の空気感、静寂の緊張感までが伝わってきて、ぐいぐいと作品の世界にのめり込んでしまう。ボーカルの表情がうつろう様に、より集中できて、エモーションが身体の奥底をついてくるようなリスニング体験が得られる。
開発者の池田氏がこだわりを語っていた通り、チャンネルセパレーションが向上したことが明らかにわかるし、リスニング品質の向上に大きく貢献している。低域の力強さもスマホの限界に迫り、ボーダーを超えるレベルだった。
例えばマイケル・ジャクソンの楽曲『Off The Wall』は、冒頭のベースラインがしなやかに弾み、厚みのある低音を響かせる。ノイズフロアが低く、透明なボーカルのハイトーンがキリッと突き抜けた。エレキやシンセサイザーのメロディも伸びやかに歌っている。気持ちの良い音楽だ。
■HDR対応がプレミアムスマホの新しいスタンダードになる
スマホによるハイレゾ再生は、もはや中上位機種であれば当たり前の機能になった。これからHDR対応もプレミアムモデルを中心に普及していくだろう。だが、これまでずっと「感性」の領域でクオリティを追求してきたソニーのXperiaシリーズだからこそ味わえる、極上のサウンドとHDR映像が最新モデルの「Xperia XZ Premium」にぎゅっと凝縮されている。
映像については同時期に発売されるいくつかのHDR対応端末とゆっくりと見比べてみたいが、ひとまずはXperia XZ Premiumで、ひかりTVやdTVからも配信される4K/HDRコンテンツを味わいたい。
スマホのHDR対応は、画質向上をわかりやすく体験させてくれる、非常に意義のある進化だ。これから多くのプレミアムモデルに採用されて欲しいし、コンテンツが増えてくるのが楽しみだ。NTTドコモでは下り最大速度768Mbpsの高速インターネット環境を日本全国に展開しつつある。次世代の高品位なエンターテインメントをよりスムーズに楽しめるよう、周辺技術の整備にも期待したい。
(山本 敦)