HOME > レビュー > Unique Melody「MASON IIカスタム」を聴く ー 卓越した表現力を備えた12ドライバーモデル

オープンBAドライバーを搭載

Unique Melody「MASON IIカスタム」を聴く ー 卓越した表現力を備えた12ドライバーモデル

公開日 2017/07/20 10:01 編集部:小澤貴信
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
音の強弱や階調を明瞭に描き出してくれる

パンチ・ブラザーズ「Julep」(96kHz/24bit)では、冒頭のウッドベースのソロを高解像感に描写してくれる。弦のきしむ音やウッドベースのボディの深い鳴りまで生々しい。一方で立ち上がりはとても速い。ここにアコースティックギターやストリングスなどが加わっていくのだが、全帯域にわたって優れた解像力を見せてくれる。楽器の音色の描き分けも素晴らしく、豊かな色彩を感じさせる表現だ。

続いてダイアナ・クラールの「Superstar」(48kHz/24bit)を聴く。据え置きオーディオ機器の取材やセッティングのときに必ず使う1曲だ。MASONが聴かせてくれるダイアナ・クラールのボーカルは、稠密という言葉がぴったりの表現。息づかいまで伝わる一方で、べたついた感じがない。バックのストリングスは、音は澄んでいるが分厚く、ボーカルの周囲に立体的に展開する。

優れた解像感と立ち上がりの早さの両立が、優れた再現性に繋がっていると感じた

MASON IIの音場表現で特に優れていると感じたのは、音が広がる際に展開される空間の情報量が多いこと。音と音の間にある空気や残響の階調を明瞭に描き出してくれるようなイメージだ。MAVERICKも音場表現は優れていたのだが、空間に楽器が点で配置されるような、もっとあっさりしたものだった。MASON IIはより情報量が多く、各楽器が織りなす響きを、レイヤーを重ねるように描き分けてくれる。

ボブ・マーリー「Is This Love」(192kHz/24bit)では、MASON IIの音数の多さが際立ち、音色表現の豊かさも際立っている。ベースラインは量感こそ欲張らないが、優れた解像感で音色や音階をしっかりと描写する。メインボーカルとコーラスの掛け合いがクリアに交差する。表情に富んだ陽性のボーカルも、Unique Melodyのイヤホンに共通する魅力と感じる。

打ち込み系の音はどうだろうか。エイフェックス・ツイン『Syro』に収録された「minipops 67」では、細かく刻まれるマシーンドラムの一音一音を明瞭かつタイトに描き分ける。低音のシンセが、音の輪郭をぼやけさせることなく、クイックに動き回る様も快感だ。音の洪水の細部までを見渡せる快楽を味わえる。

トライバルなリズムが縦横無尽に打ち鳴らされるJlinの最新作『Black Origami』から「Kyanite」では、溢れるような音数の多さをここぞとばかりに楽しめる。スチールドラムのような音からからタムタムまで各音の濃淡や強弱のニュアンスに富んでいて、立ち上がりも立ち下がりも速い。

最後に、近頃必ずチェックに用いているボニー・プリンス・ビリー「Nomadiv Revery」を聴く。音数が少なめシンプルなバンドサウンドだ。楽曲終盤、声色を変えながら幾重にも多重録音された絶叫コーラスが聴きどころなのだが、この声色が見事に描き分けられている。

幾重にも重ねて録音された叫ぶようなコーラスでは、トラックごとに微妙に声色を変えたボーカルの叫びのレイヤーを、見事に描きわけている。MASON IIの音の美しさが発揮されている。

12ドライバーを巧みなチューニングでまとめ上げ卓越した表現力を獲得

MASON IIカスタムは、実に音楽を表情豊かに鳴らしてくれるイヤホンだ。その表現力のバックボーンになっているのは、高解像度かつ高密度な音楽再生に、音の立ち上がりのスピード感が伴っている点だ。だから音の強弱や音色がとても明瞭に描き分けられる。12ドライバー構成の賜物ともいうべき情報量や解像力と、それを巧みな位相管理で制御できているからこその音の立ち上がりの速さや自然な音の広がりが、音楽的表現力の高さにつながっている。

強いて言うなら、組み合わせるプレーヤーやアンプによってその力を発揮しきれない場合もある。ただ、本機はUnique Melodyの最上位モデルであることを考えれば、充実した再生環境を前提として最高峰を目指したことも頷ける。組み合わせるアンプやプレーヤーによって、別の表情を引き出すことのできる非常に高いポテンシャルを備えているとも言い換えられる。

以前、本機の音質チューニングも手がけているミックスウェーブの宮永氏が、「ドライバー数が増えるほど、ある意味で“誤魔化し”を利かせることは簡単になります。しかし、それだけに、本当の意味で正確な音を実現させるのは難しいのです」と話していた。MASON IIでは、ドライバー数を増やすことで曖昧になる領域に対しても、真摯に向き合って音質チューニングを行ったのだろう。それが、何よりも音に現れている。

前へ 1 2 3

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

トピック: