空間表現に長けたバランス良いサウンド
徹底して良い音を目指した“最強のエントリー”を謳う、Unique Melody「MACBETH II Classic」レビュー
■“Classic”な部分と“II”な部分
しかしこの真新しい第二世代MACBETHの名前には「Classic」という言葉も入っている。これは何を表しているのか。
実はこちらは筐体の製作手法が「古典的」であることから名付けられている。どういうことかというと、MACBETHでは利用していた3Dプリンターを今回は使わずに、カスタムイヤモニ初期からの手作業の多い伝統的なやり方で生産されている。
その大きな理由はこのモデルのこのルックスの実現のためだ。樹脂にファイバーを埋め込み、その繊維のランダムな流れで大理石のような模様を浮かび上がらせるというそのデザインは、職人の手作業でしか作れないのだという。
そんな模様無しにしたらもっと安くできたのでは?とも思うが、同社の考える「最強のエントリー」は「安ければルックスなんてどうでもいい……わけがない!」ということだろう。
なお、ハイブリッド構成でなくなりダイナミック型ドライバーを搭載しなくなったこともあってか、筐体は初代よりも大幅に小型化されている。これによって装着の安定性もグッと向上。大柄であるとか耳のかなり奥まで入るといったこともなく、イヤモニタイプとしては癖のない素直な装着感が好印象だ。もしかしたらだが、同社は現在のエントリークラスにおいて装着感の重要性が高まっていると判断し、それもハイブリッド型からの転身という判断の一要素になったのかもしれない。
一方「II」の意味はそのままで、MACBETH「第二世代」という意味だろう。他モデルの第二世代と共通する、筐体の適切な場所に適切な大きさの空気孔を設置する「ポート・チューニング」、音導管を金属製としてその表面をプラチナ塗装で整えるといった技術によって、空間表現や音の質感を引き上げている。
■エントリーユーザーに「空間性」を提案
試聴は価格的にもバランスの良い、Astell&Kern「AK70」をプレイヤーとして使って行った。
まず全体的な印象をまとめると、初代モデルは音色にしても空間にしても濃さや厚み、力強さに特色を備えていたのに対して、こちら二代目は抜けや広がりといった要素をより強く引き出している。えらく抽象的な喩えだが、ジャンケンで言ったら初代はグー、こちらはパーといった印象だ。だからこちらが勝ちという意味ではなく、音や空間がパーっと開く様子をイメージしていただければと思う。
技術的な話としては「ダイナミック型ドライバーを搭載していないのでダイナミック型らしいパワフルさはなくなったものの、ポート・チューニングによって空間性は大きく向上した」といったところだろうか。
ではそのようなドライバー構成、そのようなチューニングにした意図としてはどういったことが考えられるだろうか。
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