【レビュー】パイオニアの密閉型ヘッドホン「MONITOR5」を、人気DAP／アンプ 5機種で聴いた

■まずは「U-05」と組み合わせて、MONITOR5の実力を検証

まずはSE-MONITOR5の全開の実力を知るべく、リファレンスともいうべき同じくパイオニアの据置型ヘッドホンアンプ「U-05」との組み合わせを試聴してみることにした。

U-05との組み合わせでは、密閉型とは思えない、自然な広がり感を持つ立体的な表現力に富んだサウンドを聴かせてくれる。定位も揺るぎなく、TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDの楽曲などは、スピーカー環境で聴いて記憶していたサウンドフィールドが忠実に再現される。

サウンドキャラクターはというと、メリハリがはっきりとしていて立ち上がりがとてもシャープなのだが、尖ったイメージはそれほどなく、とても自然で聴きやすい。ピアノの演奏を聴くと、基音が強く倍音は添えるように乗ってくるので、耳障りな印象がない上に音色には深みがある。とはいえ、けっして高音が控えめというわけではなく、金管楽器を聴くとほどよい煌びやかさが伴っている。素性の良い、きめの細かい高音ともいえる。

低音もジェントルなイメージで、量感は確保しつつも程よく締まったフォーカス感があり、中域を邪魔したりうるさく感じることは一切ない。総じて、リスニング向きの聴き心地の良さと、モニターユースも可能な音の正確さを併せ持つ製品といっていいだろう。

■DAP＆スマホと組み合わせて、ポータブル環境での相性を検証する

さて、そんなMONITOR5はポータブル環境でどこまで実力を発揮できるのだろうか。まずは、小手調べとしてオンキヨー製のスマートフォン「GRANBEAT」で試聴してみた。接続には、2.5mm4極バランス端子を使っている。

帯域バランスは変わらず、解像度感もある程度は確保され、端正で丁寧なサウンドが楽しめる。“MONITOR5らしさ”は、充分に発揮されている。ただしダイナミックレンジの幅広さや空間的な広がり感の良さは、当然といえば当然だが、据え置きモデルのU-05の時の方がより引き出されていた。また、男性ヴォーカルの歌声がウォームな質感になってしまう点は好みが分かれるところ。好ましいが、MONITOR5のポテンシャルはまだまだ引き出せる印象だ。

続いて、ソニー・ウォークマンのフラッグシップモデル「NW-WM1Z」で試聴。偶然にもケーブルに互換性があったため、KIMBER KABLEを採用するソニー製リケーブル「MUC-B30UM1」を使いバランス接続で試聴した。

MONITOR5らしい心地よい音色が、素直に発揮されている。とてもピュアな音色だ。一方で、音が客観的すぎるというか、メリハリがやや弱く感じてしまうところもある。ヘッドホン出力をハイゲインに変えてみたりもしたが、そういったことで解決できるものではなかった。低域にもっと踏ん張りがあるというか、駆動力の高いヘッドホン出力との組み合わせが良さそう。両製品共に、相手が想定されていない組み合わせだと感じた。

ポータブルプレーヤー単体との組み合わせ試聴のなかで、最も相性が良いと思えたのが、次に試聴したQuestyle「QP2R」だ。MONITOR5らしい丁寧さを残しつつも、メリハリのしっかりした、ダイナミックなサウンドを聴かせてくれたのだ。解像度感も十分に確保されており、空間表現も十分な広がり感を見せてくれた。

ただし、勢いが良すぎて時に荒さを感じるときもあった。パワー的にはゲイン“H"がよいのだが、もともとの音色傾向を考えると“M"あたりが理想的で、それだとU-05で聴いたダイナミックな抑揚表現は得られず。なんとも惜しい感じだ。とはいえ、試聴した「QP2R」がほぼ新品だったため、エージングが進むと、この組み合わせの相性がさらに良くなる可能性はある。