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世界基準のブランドならではの設計思想

BenQ “20万円切り”4K/HDR DLPプロジェクター「HT2550」の実力をチェックした

公開日 2018/02/13 10:15 鴻池賢三
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「制作者の意図に忠実」なことを求める設計思想

4K/HDRとは少し異なるテーマだが、筆者は「正確な色再現」に注目した。BenQでは「Cinematic Color」と命名し、一貫してRec.709に準拠した高精度な色再現にこだわっている。HDTVの制作基準であるRec.709を守り、制作者の意図した色調をホームシアターでも忠実に再現しようという考え方だ。

映像装置の場合、店頭での比較に打ち勝とうと、ビビッドな画作りを行うメーカーが少なくない中、たとえ販売面で不利であろうとも、正しい映像を届けようとする同社の良識を称えたい。DLPプロジェクター販売台数世界ナンバーワンブランドならでは、つまり発想が「世界基準」なのである。

色域は「BT.709」「BT.2020」「DCI-P3」を指定することも可能

ここで「Rec.2020時代にRec.709で良いのか?」という疑問が湧くが、実際のところ、自然界にはそれほど極端な反射色を持つ物体は少ない。Rec.709の色域も、研究の結果から、データ量と色再現性のバランスを勘案し、合理的に導き出されたもので、極端に不足するものではないのだ。広色域性能を持つ映像装置が決して悪いわけではないが、中には、その性能を誇示するかのように色を盛ってしまい、色再現が正確とは言えないケースも見受けられる。

BenQの「Cinematic Color」は、思想として「制作者の意図に忠実」で、さらにRec.709に沿って正確な表示ができるよう、自社の管理下で色精度の高いカラーホイールを製造したり、生産ラインで映像のキャリブレーションを行うなど、全てのユーザーに「正確な色」を提供できる体制を敷いているのも特筆に値する。

視聴の際、ピクチャーモードはRec.709準拠が活きる「Cinema」を選ぼう。厳密に最終的な色味は、組み合わせるスクリーンの影響を受けるが、「制作者の意図に忠実」という観点で信頼がおけ、こうした映像が複雑な調整や設定を必要としないで得られるのも好ましい(編集部の視聴室で常設している「マリブ」は、色温度が少し高めに出る傾向があるため、色温度を「低」に設定した)。

色温度設定なども細かに追い込める

ピクチャーモードは「Cinema」や「Vivid TV」など4つのプリセットと2つのユーザー設定を用意

先に触れた『レヴェナント: 蘇えりし者』は、自然光のみで撮影されたという映像美がポイントだが、色に違和感を覚えないことで、目の前に広がる映像の世界にスムーズに引き込まる。「印象的な色」ではなく「正確な色」が重要だと改めて気付かされる。

明るい部屋なら、映像モードは元気な「VividTV」が似合う。ただし、色彩面で派手な画作りをしていないので、色が洗い流されがち。色(カラー)を「60」くらいに盛ると、適度に力強い画になるのでお薦めしたい。いずれにしても調整できる範囲なので、設置環境に応じて追い込める。

HDR表示については、コンテンツの収録ニット(最大輝度)数にあわせて、−2−、1、0 、+1、 +2の5段階から手動で調整可能。白飛びする作品はマイナス側へ、暗部が沈み過ぎる作品はプラス側へ設定すると、良好な画が得られた。

「HDR輝度」は-2から+2の5段階で調整可能

ほかに筆者が注目したのは、「Silence」機能。ファン音を静かにする特殊なモードで、輝度の低下に加え、ピクチャーモードが「Silence」に固定されて色温度も「標準」以外は選べなくなるなど制約があるが、ファン音は無音に近いくらい静かになるのは驚き。夜間、同室で誰かが眠っているようなケースで役立ちそうだ。

「Silence」機能を選ぶことでファン音を小さくできる

4H/HDR信号をガッチリと受け止めるスペックを備えつつ、小型軽量で手軽な価格を実現したのは画期的。画質一辺倒ではなく、使い勝手や予算感など、リビングユーザーが求める機能性をバランス良く実現している点が新しく、先行する4K/HDRプロジェクター製品と異なるジャンルの製品に感じた。灯りの残る部屋で、気軽に壁面投写するのも良いだろう。

マニア向けの印象が強かった4K/HDR映像が、一般家庭に浸透するきっかけとなりそうな、画期的な新モデルの登場だ。

(鴻池賢三)

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