【特別企画】フルCHORDシステムで試聴
CHORD「SPM1400MkII」を聴く ー 音楽の躍動を余さず再現する最高峰パワーアンプ
冒頭から、ドラムスが目の覚めるような俊敏な立ち上がりをみせる。このあたりには電源部の効果が如実にあらわれる。切れ味の良いシンバルとドラムの打音が、歪むことなく空間を舞う。バスドラムは立ち上がりが早いだけでなく、圧巻の音圧を示す!
透明度の高いピアノの響きが左右に展開し、ウッドベースは木質感を際立たせる。特に中盤のベースを弓で弾くアルコ奏法では、弦のごりっとした質感、バッサバッサと弓を擦る感触をクローズアップしていく。GIYA G3のダブルウーファーをものともせずに、量感たっぷりの低音が再生された。やや暖色系の音ということもあり、立ち上がりが俊敏であっても硬い音やきつい音を出すことなく、臨場感を鮮明にするところがとても良い。
■圧倒的な駆動力と音楽再現力を兼ね備えたパワーアンプ
ハイレゾ再生では、テオドール・クルレンツィス指揮ムジカエテルナによるチャイコフスキー交響曲第6番(96kHz/24bit、e-onkyo)を再生した。プレーヤーからアンプまでS/Nが非常に高いので、第1楽章の弱音部においてもその静寂感が際立つ。
やがて壮大なオーケストレーションが訪れると、音像を崩すことなく、整然とした音場の輪郭を描くことにも感心させられた。特に終楽章の弦楽パートの響きは格別にスケールが大きい。ここでも弱音から強音へと移りゆく旋律は、実に美しい響きを聴かせてくれる。
様々なハイレゾ・ミュージックを再生したが、11.2MHzDSDのサンタナ/ロータスの伝説(完全版、e-onkyo music)の演奏には感激した。コンガやドラムス、金属系パーカションの響きは立ち上がりが素早く、今この場で演奏されているかのようにリアルだ。キーボードの音が背景に点在するその中央に、リヴァーヴを効かせた色鮮やかなサンタナのエレクトリック・ギターが轟く。重心の低いベースラインも見事だ。
プリアンプを使わなかったこともあり、BluMk2とDAVEによる高密度でワイドレンジな音がSPM1400MkIIを通じてストレートに表れている。私はよりアナログ的な質感を楽しみたいと考え、DAVEのHFフィルターをオンにした。これは好みで使うといい。
フルCHORDのシステムが再現する音楽の躍動感、臨場感にすっかり惚れ込んでしまった。できればこのままずっと聴いていたいと思った。SPM1400MkIIは、技術に裏打ちされた音質とスピーカー駆動力を特徴とするが、音質という尺度にとどまらない、音楽を、臨場感をもってリアルに再現する音楽再現力をも備えている。また、長く愛用できる佇まいにも私は好印象を持った。
今、DAVEなどへの大きな注目もあって新しいCHORDファンが急増しているようであるが、ぜひ一度、CHORDのアンプの音にも触れてほしい。そしてCHORDのフルシステムで、その音と音楽の魅力を探ってほしいと思うところである。
(角田郁雄)
特別企画 協力:タイムロード