【特別企画】キャビネット構造を一新
ELACの新たな中核 “VELA 400” 「FS407/BS403」レビュー。JET Vトゥイーター搭載の決定版スピーカー
ピアノのアタックはかっちりとした硬質なタッチであるが、ハーモニクスの和音を1つ1つすくいあげるようなきめ細やかさと、低域方向に伸びる安定感あるボディの響きを両立する。余韻の階調も細やかで、リヴァーブとの繋がりもシームレスに感じられる。ボーカルは基本的にシャープでキレ良い描写であるが、口元のウェット感、ブレスのわずかな動きも分離よく描き出す。瑞々しい質感と張りのある若々しい声のトーンが活力に満ちたサウンドに結び付くようだ。
演奏直前のカウントの佇まい、余韻やスタジオの空間性も立体的に表現。低域を中心としたリズムも躍動で、密度の高いグルーヴを紡ぎ出す。ロック音源のリズム隊はタイトであるが、程よい音像のボディ感があり、ずっしりとした重心の低さに繋げている。このあたりはVELA BS403では表現できない、低域方向の充実さが生む、より自然で落ち着いたサウンドだ。
ディストーションギターのリフもエッジを適度に丸め、軽快に浮き上がる。ボーカルやハイハットなど、音像の質感を丁寧に引き出し、上品なタッチで描く。ロックならではの荒々しさを残してはいるものの、勢いに流されるのではなく、冷静にソースと向き合い、本質に切り込むような一面も感じることができる。
特にVELA FS407を聴いていて思ったのは、JET Vトゥイーターの音色に対して、ウーファーの追随性を気に掛けるようなことが一切ない、システムとしての統一感、完成度の高さを実感できたことだ。もちろんVELA BS403も旧モデルである「BS403」とは段違いに完成度が高く、JET Vトゥイーターだけが抜きんでることがない、ナチュラルな音にまとめている。
ユニット構成や筐体サイズからくる安定感はさすがに大きく、余裕があるならVELA FS407の方を薦めたい。逆にサイズ的な制約からブックシェルフ型での選択が必要な局面であるのならVELA BS403をぜひとも検討いただきたい。より小さくコンパクトではあるが、セッティングなどにストイックな一面を持つ「300 LINE」より設置の自由度も高いうえ、スピーカーの存在を感じさせない音離れの良いサウンド性も持ち合わせている。
いずれにせよ、このVELA 400 LINEはJET Vトゥイーター搭載機の決定版といえる完成度を誇っており、高級機に相応しいデザイン性も兼ね添えた、死角のないプロダクトだ。
(岩井 喬)
■試聴音源
・飛騨高山ヴィルトーゾオーケストラ コンサート2013『プロコフィエフ:古典交響曲』〜第一楽章(96kHz/24bit)
・デイヴ・メニケッティ『メニケッティ』〜メッシン・ウィズ・ミスター・ビッグ(CDリッピング:44.1kHz/16bit・WAV)
・長谷川友二『音展2009・ライブレコーディング』〜レディ・マドンナ(筆者自身による2.8MHz・DSD録音)
・『Pure2-Ultimate Cool Japan Jazz-』〜届かない恋(2.8MHz・DSD)
・Suara「キミガタメ」11.2MHzレコーディング音源(5.6MHz変換したファイルを使用)
特別企画 協力:ユキム