ピュアオーディオクラスのサウンドを実現
パイオニア「UDP-LX800」レビュー。“別格の音質”を手中にした旗艦UHD BDプレーヤー
電源部に導入された電磁波と振動への対策はなかなか凝っている。アナログオーディオ用電源トランスは銅メッキと制振塗装を重ねたケースで覆い、デジタル電源基板も制振塗装を施したカバーで密閉。前者にはf字孔、後者にはヘ音記号のプレス加工が見えるが、これは筐体内部の定在波を抑える役割を担うという。普段は目につかない部分とはいえ、音にこだわるパイオニアらしい工夫と言えそうだ。
電磁的な輻射ノイズを抑えるにはノイズ源となる部品や回路への電源供給を断つのが確実だが、本機はそこにもかつてないほどのこだわりを見せる。
アナログ音声出力時はデジタルオーディオ回路と映像回路の電源供給を停止するダイレクトモード、デジタル音声出力時はアナログオーディオ回路を電源トランスの段階からカットするトランスポートモードをそれぞれ選択でき、前者ではピュアオーディオのディスクプレーヤーと同等の高純度な再生音を実現。映像再生時やHDMI、同軸デジタル、光デジタル接続で音楽を再生するときはトランスポートモードを選ぶことで映像と音声の品位向上が期待できる。
アナログ出力を想定したダイレクトモードは他にも例があるが、デジタル出力を優先するトランスポートモードを設定したプレーヤーは珍しい。各モードはリモコンおよび本体の「ダイレクト」ボタンで切り替え可能で、選択したモードは本体に表示されるので操作に迷う心配もない。
LX500との最大の違いはD/Aコンバーターのデバイスと構成が異なること。本機はESSのES9026 PRO(8ch仕様)を左右1個ずつ採用し、それぞれ8回路のパラレル駆動という贅沢な構成に格上げされた(LX500は『AK4490』1個)。
この基本構成はPD-70AEと共通で、アナログオーディオ基板では銅製バスバーなどの音質向上策も継承する。アナログオーディオ回路の基幹デバイスと作り込みは音質を大きく左右するため、特にアナログ接続で高音質再生を目指す音楽ファンは注目しておきたい。XLR出力も本機だけの装備なので、組み合わせるアンプが対応する場合はバランス接続も視野に入れておこう。
■安定した重心と見通しの良さ。時間をかけた調整が一聴して分かる
音元出版のオーディオ試聴室とAV試聴室それぞれに用意したリファレンスシステムへLX800を接続し、音楽と映像のディスクメディアを再生した。スピーカーはステレオ再生がB&Wの「803D3」、マルチチャンネル再生がELACの「240 LINE」を使用。ディスプレイはソニーの有機ELテレビ「KJ-65A8F」を組み合わせている。