ピュアオーディオクラスのサウンドを実現
パイオニア「UDP-LX800」レビュー。“別格の音質”を手中にした旗艦UHD BDプレーヤー
まずはアナログのバランス接続でCDを聴く。時間をかけて性能を突き詰めたプレーヤーであることは最初の一音を聴いた瞬間に気付いた。骨格が堅固で安定感が高く、しかも細部を克明に描写、ピュアオーディオの本格派コンポーネントに通じる見通しの良さもそなわる。
ガラーティのピアノトリオはドラムの各楽器にフォーカスが合い、特にシンバルなど高音の生々しさは格別だ。ベースは骨太で緩みがなく、切れが良いのでピアノの旋律にまとわりつくことがない。
ダイレクトモードをオンにしてデジタル回路と映像回路をオフにすると、さらに音像がひと回り引き締まり、リズム楽器のビート感が際立ってくる。ベースがソロで強いアクセントを刻む瞬間、スピーカーから放たれるインパクトの強さと音の速さは圧巻で、まさに瞬発力のあるサウンドが飛び出してくる。
ブニアティシヴィリが独奏を弾くラフマニノフの『ピアノ協奏曲第2番』、冒頭のピアノの和音はダイレクトモードで聴いた方が響きの純度が高い。オーケストラは重心が低くクレッシェンドの盛り上がりに力感がそなわるが、その先のクライマックスで響きが飽和したり頭を打つことはなく、そのまま伸びやかな余韻につながっていった。再生環境によってはZERO SIGNAL端子とアンプをつなぐことでさらに音場の透明感が上がることがあるので、試してみると良い。
パイオニアの歴代フラッグシップ機を使い続けてきた経験から判断すると、重心の低さと骨太な骨格は先代機LX88に通じるが、音場の見通しの良さはLX800の方が一枚上手である。筐体内部の空気の流れまで意識したチューニングの成果かもしれない。
■全体と細部を両立する表現力。映画音響の基本にも合致する
次にパイオニアのフラグシップAVアンプ「SC-LX901」とHDMIでつなぎ、デジタル接続でSACDのマルチチャンネル音源を聴いた。この接続では積極的にトランスポートモードを選ぶべきで、大音量時の瞬発力やスケール感に明らかな優位が認められた。
山田和樹指揮スイス・ロマンド管弦楽団のルーセル『バッカスとアリアーヌ』では音数が増えても細部が混濁せず、大太鼓の一撃で音像定位や木管の音色がふらつくことがない。大編成のオーケストラは音圧の大きな低音の影響で他の楽器の音色がくもりやすいのだが、今回の試聴システムではその影響が少なく、一音一音を粒立ち良く再現することができた。LX800に投入された様々な振動対策が功を奏した好例である。