最先端カートリッジが生み出される現場に潜入
オルトフォン・ファクトリーツアー、デンマークの工場から届けられる「クオリティ」と想いを探る
■カートリッジの要となるダンパーを自社で生産管理
現在のオルトフォンの事業がカートリッジにとどまらないことは、ご存知の方も多いかもしれない。オルトフォン・マイクロテックとして、医療機器を始めとした数々の精密機器の部品を製造しているのだ。実はこのことが現在のオルトフォンの技術力を語るにあたり、欠かすことのできない要素となっている。
案内された部屋へ白衣を身に着け、マイクロテックに入ると、そこでは非常に小さな部品が生産されていた。その奥に足を踏み入れると、何やら大きなローラーを厳しい目で回している従業員がいる。ここはいわゆるダンパーを生産している工程だ。
ダンパーは、精密機器において実にさまざまな用途に使われている。オルトフォンでは米粒大以下のダンパーが多数生産されており、これが世界中の医療機器へと採用されている。もうお気づきの方も多いと思うが、オルトフォンはカートリッジにおけるダンパーを唯一自社で管理できるブランドでもあるのだ。
その恩恵を具体的に言うと、例えばフラグシップのMC Anna。通常、カートリッジの世界ではどうしても個体ごとに適正な針圧にばらつきが出ると言われているが、実はMC Annaにはそれがない。これはダンパーの硬さなどを極めて高度なレベルでコントロールできるためで、マグネットとカンチレバーの関係がベストな磁界に来るように均一な品質のダンパーを生み出すことができるということになる。ダンパーはカートリッジのなかでもエンジンを支える重要なパーツだが、それを自社で管理できるということがどれほど大きな意味を持つか。想像するだけでも明らかだろう。
もちろん、100周年モデルとして登場したMC Centuryもこのダンパーの精密さが鍵を握っており、硬さひとつからコントロールできたことで、ダイヤモンドカンチレバーが持つ極めて高い解像度を存分にかつ正確に引き出すことが可能になっているのだ。