PIEGA Factory Tour
ピエガ本社工場訪問記 −スイスを代表するスピーカーブランドのいま
ピエガでは異色? Master Line Sourceとは?
ピエガのスピーカーはアルミキャビネットとリボンユニットを搭載していることが大きな特徴となっているのは、ここまででお分かりいただけたかもしれない。
しかしここでバラビオ氏は、「そんな私達のなかでも特別なのが、Master Line Sourceシリーズですね」と、アッセンブル中のMaster Line Source 2を目の前にして話を始めた。
「私達には、Master Line Sourceというラインソースの究極系とも言うべきスピーカーをラインアップしています。しかし、オリジナルのMaster Line Sourceは結果として重さが片chあたり420kgにもなるスピーカーですので、どこでも置けるスピーカーではありません。そんな理想的なラインソーススピーカーの良さをリビングでも十分に発揮できるスピーカーとはどのようなものであるべきか。そうして生まれたのが、Master Line Source 2でした」
Master Line Source 2、そしてまだ発表されたばかりのMaster Line Source 3は、フロントバッフルのみをアルミ、それ以外はMDFで構成されたキャビネットを採用するなど、トップエンドにもかかわらず、ピエガの他のスピーカーとは少々趣が異なる部分がある。
「これはMaster Line Source 2の設計にあたって、セッティング場所を選ばないエンクロージャー構造を採用したことが関係します。そもそもMaster Line Sourceは、ユニットを縦に配置して円柱状に音を放出することができるラインソースの構造を採っています。このラインソースにとって、平面から音が放出される私達のリボンユニットは非常に理想的なものなのです。これを例えばリビングなどで壁際などに置いても影響のないように設計したのが、Master Line Source 2というわけです。背面を見ていただければお分かりになると思いますが、非常に複雑なフィン、私達は"レンズ”と言っていますが、これで背面にサウンドのエネルギーを拡散させるんです。そうすることで、ユニット背後への音のエネルギーが壁の影響を受けることがなくなります。この構造を生み出すには、MDFを活用することがベストの選択肢なんです」
ピエガが優れたスピーカーを開発できる理由。それは自分たちがサウンドにおいて採れるベストなアプローチは何か、ということを常に模索していることにある。もし仮にエンクロージャー全てにアルミを使うことに固執していたとすれば、Master Line Source 2のようなユニークなアイデアを盛り込んだスピーカーは登場しなかったはずだ。彼らにとってピエガの技術というのは、あくまで理想を実現するための材料なのである。これは非常に大きな意味を持つことと言ってもいいだろう。