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【特別企画】鈴木裕氏がその音に惚れ込み自宅へ導入

音楽を聴く愉悦を感じさせてくれるスピーカー ― ソナス・ファベール「Electa Amator III」導入記

公開日 2019/12/27 12:11 鈴木 裕
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■倍音をリアルに再現してくる感じは最大の美点

鈴木邸のリスニングルームにセッティングされたElecta Amator III

その音について。鳴らしだしてまず驚かされるのはその低域のレンジ。メーカー公称の数値としては40Hz〜35,000Hzという表記だが、低域方向については30Hzが音程感正しく再生されている。

パイプオルガンを聴いても、オーケストラの大太鼓が強打されても、その再現性は結構高い。ピアノの左手の音階が下がっていくような場面でも、途中から低音がぼやけて聴こえなくなるのにはまず出会うことがない。

実際にiPhoneのアプリで周波数特性を計測しても、バスレフのエンクロージャーなのに低音はダラ下がりに出ているのが不思議だ。ちなみに、拙宅に聴きに来たベテランのオーディオマニアがその音に驚いてElecta Amator IIIを購入してしまったほどだった。

iPhoneのアプリ「FFT Wave」で計測したキャプチャー画面。低域が急峻に落ちていないのが分かる

次に特徴的なのは全体に鮮度感が高い点。鮮度感と言うと使い古された言葉だが、釣ったばかりの黒鯛の目のように爛々としていると言ったらいいだろうか。特に中高域のアコースティック楽器の倍音をリアルに再現してくる感じは、Electa Amator IIIならではの最大の美点と思う。

極めて鮮やかであり、音のザラザラする感覚や迸るニュアンス、シズル感とでも言うべき音の勢いを表現できるスピーカー。4月に試聴したソフトのひとつが、シャイー指揮/ルツェルン祝祭管弦楽団の『《春の祭典》〜ライヴ・イン・ルツェルン2017』だ。

木管楽器のひとりひとりにマイクを立てているような収録のソフトで、ここでのストラヴィンスキーの《ハルサイ》冒頭のファゴットの甲高いソロからクラリネット、コーラングレ、オーボエ、フルートと木管が増えていくところのリアルさにやられたし、その後の弦のザッザッという変拍子の部分のザクザクとしたニュアンス、そして大太鼓も含んだ打楽器陣による強打など、そのリアルな再生音がElecta Amator III購入に至る大きなきっかけになっている。

次ページパワーを入れるほどに音楽が生き生きとしてくる

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