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【特別企画】鈴木裕氏がその音に惚れ込み自宅へ導入

音楽を聴く愉悦を感じさせてくれるスピーカー ― ソナス・ファベール「Electa Amator III」導入記

公開日 2019/12/27 12:11 鈴木 裕
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■スピーカー作りの新しい方向性を示唆

ちょっと思い浮かべていただきたいが(本国のサイトに行くと歴代のモデルが掲載されている)、ソナス・ファベールにおいてElecta Amator IIIのような直方体のスピーカーを作ったのはずいぶん久しぶりのことだ。サブウーファー以外、80年代中期より以降、バッフルがスラントしていたり、後半が絞られるリュート型だったり、ライラ型だったりと、四角くないスピーカーばかりだった。

そこにこの形。この丸みを帯びたスクエアな形によって、全周囲にわたって響きを拡散させているのだろう。振動板だけでなく、エンクロージャーもスタンドも、スタンドの底板である白大理石も振動しているからこそ、大きなものが鳴っているような感じを醸しだしてしまうのだろう。

Electa Amator IIIに採用された素材やパーツ、そして形全てが高度に一体化したことで、魅力溢れるサウンドを実現した

まさにこれがElecta Amator IIIの本質である。現代的なスピーカーの設計思想のトレンドとしては、剛性の高い、それ自身響かないようなエンクロージャーに、これまた高い剛性と強度を持った振動板を持ったドライバーユニットを装着。ソフトに入っている音を付帯音なくアキュレートに再現する考え方を取るところが多い。

これに対してElecta Amator IIIでは、ウォルナットによるほのかに甘みを感じさせる密度の高い中域と、白大理石の重みのある低域と、ブラスの華やかさや皮革のオーガニックな感触。こういったものが絶妙なバランスで再生音と一体化しているのを感じる。

ソナス・ファベールを創設したのがフランコ・セルブリン。その薫陶を受け、チーフ・デザイナーのポジションを継承したのがパオロ・テッツォン。そのパオロによって生み出された、35周年記念モデルにしてソナスのスピーカー作りの新しい方向性を示唆しているのがElecta Amator IIIなのかもしれない。

音楽を聴く愉悦を感じさせてくれるスピーカーだ。演奏のインタープレイや熱気、凄味をアキュレートな再生以上に奏でてしまう。名作である。

(鈴木 裕)
(協力:ノア)

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