[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域【第254回】
AirPods Proの “音・装着性” を徹底強化! 他社製イヤーピース5モデルを着け比べた
■素材をチェック!
ではここからは、全製品を並べてポイントをより具体的にチェックしていこう。改めて確認しておくと、ペア価格概算がお手頃な順に左から5製品を並べると以下の通り。
ADV. Eartune<SOSO.LABO<Dekoni Bulletz<NOBUNAGA<Sedna XELASTEC
まずは各イヤーピースの素材。概要を一言で説明すると、
「Sedna XELASTECはシリコンでもフォームでもなくTPE、他は低反発フォーム」だ。
圧倒的多数派は低反発フォーム。繰り返しになるがやはり、メーカーとしては「純正とは明らかに別の特徴を備えるイヤピを提供したい」という狙いがあるだろう。となれば純正がシリコンなのに対して、低反発フォーム素材の採用は自然。
しかし一口に「低反発フォーム素材」といっても、ポリウレタンフォームかポリエチレンフォームか、発泡のさせ具合はどの程度かなどによって、反発力や弾性は少し異なる。そのセレクトにも各メーカーの意図があるわけだ。
そしてSedna XELASTECは、さらにまた異なる「TPE=サーマルプラスティックエラストマー=熱可塑樹脂」という素材を採用。熱で柔らかくなる性質を備えた樹脂素材だ。イヤーピースのかさ部分が耳の中の体温で柔らかくなって変形し、耳の中に吸い付くようにフィットする。
おおまかには、低反発フォームにせよサーマルプラスティックエラストマーにせよ、“シリコンより遮音性は高く、装着感はソフトになる傾向” とは言えるだろう。
シリコンイヤーピースは基本的に、耳の中に、耳の中より大きめな径のイヤピを押し込み、そのサイズ差で生じる圧迫でシリコンを変形させて耳を塞ぐという仕組み。なので「ぴったりフィットと最小限の圧迫感を両立できる絶妙なサイズ」の幅は狭く、先ほどから例に出している「Mだと若干緩くLだと若干きつい」みたいな状況になりやすい。
対して低反発フォーム素材は、あらかじめ指先で潰したイヤーピースを耳に入れるとそのフォームが耳の中で元の大きさに戻ろうと膨らむことで、イヤピが耳の中にぴたりと沿う形になって耳を塞ぐ。素材の反発を利用するのはシリコンと同じだが、こちらは「低反発」なので装着感もソフト。
サーマルプラスティックエラストマーは前述のように、耳の中に入れると体温で柔らかくなって耳の中の形に合わせて変形し、耳の中に吸い付くように張り付くようにフィットする。いわば密着力的なもので耳にフィットしてくれる印象だ。こちらも反発力には頼りすぎていないので、装着感はシリコンよりソフト。
なお、フォームとTPEに共通の使いこなしポイントもある。両素材はどちらもその仕組み上、耳に完全にフィットするまでに、耳に入れてから数分は必要。耳から外してしまったらやり直しだ。なのでAirPods Proを耳から外す機会はできるだけ減らしたい。
そこで、改めてこれまで以上に活用したいのが、AirPods Proの外部音取り込みモード。これまではAirPods Proを耳から外して対応していた場面でも、より積極的に外部音取り込みを使っていきたい。長時間着けっぱなしだと着け疲れるのでは?と不安かもしれないが、装着感のソフトさのおかげで、純正イヤピ使用時よりはその心配も少ないはずだ。