【PR】音質向上の成果を全て投入
ヤマハが掲げる「True Sound」を体現する新プリメイン登場。“5000シリーズ”から連なる思想と音を聞く
■5000シリーズの音質ノウハウを投入。パーツや構造を “生かす” 設計を追求する
山之内 5000シリーズの存在が、今回の開発には大きな意味があったように思います。
荒巻 5000シリーズの開発で培った様々な音質ノウハウが、今回のA-S3200には込められています。5000シリーズ開発によって培われた構造、素材、部品により、フローティング&バランスパワーアンプはよりその特性を生かせるようになりました。
山之内 プリメインアンプは、セパレートアンプに比べるとサイズの制約が大きいです。一体型の中に収めるための苦労はありましたか?
荒巻 通常のバランスアンプは、回路が2倍の規模になりますが、フローティング&バランスパワーアンプは1個分のパワーアンプと同じ部品点数で設計可能なため、ひとつの筐体に収めることができました。
山之内 その他、5000シリーズから継承したものはありますか?
荒巻 大電流の流れる配線用ネジには、5000シリーズに引き続き真鍮製を使っています。鉄ネジは磁性体ですので、交流電流によって発生する磁界の影響を大きく受けますが、非磁性体の真鍮にすることで影響を軽減でき、滑らかで、微妙な表現ができるようになります。音に色がつかないようにメッキもしていません。真鍮ネジを採用するにあたっては、工場の理解も欠かせませんでした。通常、組み立て工程では、磁化したドライバーに鉄ネジをくっつけてネジ締めを行います。真鍮ではそれができませんので、工場としては受け入れることが困難でした。そこで、組み立てを担当するオペレーターにも音を聴いてもらい、その違いをきちんと理解してもらった上で、どうすれば製造できるかを一緒に考えることで導入することができました。これは、工場の担当者含めて音を理解しているヤマハだからこそ実現できたことです。
山之内 製造の現場としても、理由が分かってやるのと分からないのとでは全然違いますね。
荒巻 さらに、音の生々しさやスピード感の向上を狙って、パワーアンプ出力をスピーカーに伝える線材に、方向性を揃えたPC-Triple Cを採用しました。
山之内 贅沢な構成ですね。
荒巻 最後にこれが最大の特徴となりますが、「メカニカルグラウンド」を採用しました。A-S3000では、ボトムカバーにレッグを取り付けていましたが、A-S3200では、トランスなどの重量物を受け止めるベースフレームに直接レッグを取り付けました。この構造によって、芯のある低域が出せることが分かったのです。
熊澤 A-S3000の開発を終えた後出てきた課題として、もっと低域の表現力を上げたい、というものがありました。色々研究した結果、実は電気回路よりメカの影響が大きいことが分かったんです。
荒巻 足の位置も、A-S3000から変更しています。これは音質評価により、最適な位置を決めました。
山之内 A-S3000より少し手前側になっていますね。
荒巻 レッグもこだわった設計となっており、3つのパーツの組み合わせとなっています。ピンスパイクを真鍮の小皿で受けて、これをキャップで留めるという構造になっています。これが非常に音質に効くのです。
山之内 足はA-S3200/S2200/S1200で違いますね。
荒巻 A-S2200は真鍮ですが、3つのパーツに分かれていない一体型です。A-S1200に関しては鉄製になっています。音の狙いに合わせて使い分けていて、低域のスピード感、エッジを大事にしたいA-S1200は鉄製、より低域の量感、響きを出したいA-S2200は真鍮製にしています。A-S3200の3ピース構造のレッグも真鍮製ですが、フラグシップのC-5000、M-5000と同じものです。一体型の最上位機種としてふさわしい表現を追求するためにフラグシップと同じものを採用しました。
山之内 音質的にはどのような差が出るのでしょう?
荒巻 フォーカス感が変わり、音楽からミュージシャンの姿形が見えるようになります。あと前後の表現も圧倒的に良くなりますね。
山之内 フロントにはレバースイッチが3つついています。
荒巻 機構チームが構造設計したヤマハオリジナルのスイッチなんです。A-S3000と比べていただいても、緩みのない、剛性感の高いレバーになっています(注:A-S3200のみ)。実は音質にも影響しています。
熊澤 フラグシップまでやり切った中で、いい部品を使うということもあるのですが、むしろ当たり前と思っていたところを疑うことで、音質をさらに追求できる、そういう勘所への理解が全体的に上がりましたね。
荒巻 製品の音質のレベルが上がった結果、部品だけではなく細かいところまで手を入れると音がどんどん変わるんです。何を変えても変わってくるということが分かってくるので、触るのも難しくなってきていますね。
熊澤 そのため、最近は電気部品を取っ替え引っ替え、ということはあまりしません。むしろグランドを突き詰める、基板パターンを考え直すなどの電流の流れ方や、構造などのメカニカルな部分を突き詰めることで、音質のレベルを追求しています。
小林 こういったノウハウの積み重ねは、ヤマハの開発チームの財産ですね。