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ヤマハが掲げる「True Sound」を体現する新プリメイン登場。“5000シリーズ”から連なる思想と音を聞く

公開日 2020/10/09 06:30 インタビュー構成:ファイルウェブオーディオ編集部/レビュー:山之内 正
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■音質の方向性は共通で、グレードの違いを表現

山之内 A-S1200とA-S2200についてですが、トランスにトロイダルトランスを使われています。この狙いと実際の効果はいかがでしょう?

荒巻 前モデルではEIコアトランスを使っており、ゴリっとした低域が魅力で、すごくいい味を出すトランスだったのですが、思い切ってさらに上の表現力を狙おう、ということでトロイダルトランスを採用しました。トロイダルトランスのいいところは、やっぱり「OPENNESS」。開放感あるというか、音が飛んでくる感じがします。

熊澤 コントラバスでは、ブンッという音の前の倍音も入っていて、トロイダルの中高域の抜けの良さが表現力につながっている気がします。

山之内 そこまで語れるようになったというのは大きな進化だと思います。これまでも苦しんできたと思いますので、レベルの高い話ですね。設計開発の過程で、小林さんから販社の立場として注文は出されたのですか?

小林 以前のA-S1100やA-S2100の時は、個性の差が購入の際の判断基準となってしまう、ということもありました。今回はそうではなく、3モデル共に⽅向性は同じサウンドコンセプトに貫かれていることが最重要でした。また、グレードの違いは⾳の質の差であり、カタログに謳っている使用パーツの差だけが理由であってはなりません。今回は開発チームの意志が統一されていて、それが実現できました。

山之内 リモコン操作でのボリュームの細かな動きも非常に気持ちが良いです。

荒巻 これはソフトウェアの部分になります。以前のモデルでは “チョン押し” しても動かない、あるいは動くときは動きすぎてしまったのですが、ソフトウェアの担当者にもっとシビアに、細かく調整できないか、と提案して作り直してもらいました。動きがスムーズになっていると思います。また、リモコン操作だけではなく、本体のレバーも含めて直接触る喜びも意識しました。

熊澤 そもそもA-S2000からレバーを採用しているのも、触っていただきたいからです。タッチパネル全盛のこの時代だからこそ、あえて手で触る喜びを大事にしたいのです。

外観上の違いとして、ボリュームノブの周りに印が刻まれている

山之内 デジタルではなく針のメーターというのもこだわりですね。

荒巻 音楽を見て楽しむことも重要です。

山之内 フォノ回路についても教えてください。

A-S3200は大ぶりなフロントメーターも魅力。耳だけではなく目でも音楽のダイナミズムを感じられる

荒巻 MCヘッドアンプは、超ローノイズタイプのトランジスタを採用しています。1chあたり4つ、2重に重ね合わせるように配置することでS/N感が上がります。また、半導体スイッチによる音質劣化を避けるために、MC/MM切り替えには小信号リレーを採用しています。

熊澤 聴感上のS/Nも、以前のものより良くなっています。実は測定器で測れるS/N以上のものを、人間の耳は感じているのです。測定器には現れなくても、人間の耳で何かおかしいな、と感じることがあります。そういったことをパターンを追い込んでいくことで改善しています。

山之内 ほとんど職人技、匠の世界ですね。

荒巻 他にも、ボリュームもヤマハオリジナルのICを使っています。一般的な電子ボリュームでは、入力電圧は±5Vがせいぜいですが、±20Vまで入れることができます。その結果、S/Nが抜群に良いのです。そして、プリアンプ部は音に色がついてしまうのを避けるために、全てディスクリート部品で組まれており、音声信号はオペアンプを一切通過していません(注:トーンコントロール使用時を除く)。

■格上スピーカーとの組み合わせを追求し、ワンランク上の性能を実現

山之内 5000シリーズでプレーヤーからスピーカーまで、全てのシステムが完成したことで、音を追い込む上での基準が明確になったと言うこともあると思います。NS-5000のスピーカーを使って開発を進めていたことで分かったこと、良かったことはありますか?

荒巻 NS-5000を開発した時は、ヤマハのトップグレードはA-S3000でした。A-S3000ですとNS-5000の真の実力が出ていないと感じていました。NS-5000はちゃんと鳴らそうとすると、低域の質感の向上が欠かせません。そのための技術として、メカニカルグラウンドや、真鍮のネジに大きな意味がありました。

小林 NS-5000は情報量やS/N感に優れ、音色バランスも含めた音の違いが良く分かるスピーカーです。営業の現場では、いろんなところに持ち回って他のアンプと組み合わせる他流試合もやってきました。すると、アンプの個性はすごく表現するのですが、このスピーカーのベストパフォーマンスを引き出せてはいない、と感じることが少なからずありました。M-5000、C-5000の開発の際は「NS-5000を鳴らし切るアンプであること」が求められましたが、今回のプリメインについても、まずはNS-5000を念頭に置いて開発を進めました。頭の中にあるイメージではなく、実際に指標となる製品があるというのは大きな差を生みます。格上ともいえるスピーカーとの組み合わせも求めた結果、ワンランク上の製品に仕上げることができたと考えています。

NS-5000は、今回のプリメインアンプシリーズ開発に欠かせない存在となった

山之内 A-S3200はNS-5000をとてもよく鳴らしていて、NS-5000の真価、一番聴きたかったことがよく出てきていると思います。

熊澤 5000シリーズはヤマハの理想の音を追求するものですが、その下の4桁A-Sシリーズは、より多くの人に伝えていきたいモデルです。ヤマハとしての長期戦略もありますが、今回のA-S3200は、私にとっても思い入れが深い製品です。これまでチームとして積み上げてきた表現力を改めて実感しています。

山之内 製品内部にまで踏み込んだ詳しいお話、ありがとうございました。

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